交通事故による醜状痕と逸失利益

交通事故により手術などの傷跡が残るものを「外貌の醜状」、いわゆる醜状痕と言います。

醜状痕については、その部位や大きさなどにより、後遺障害等級認定では、外貌に著しい醜状を残すものが7級、外貌に相当程度の醜状を残すものが9級、外貌に醜状を残すものが12級とされます。

一般的には、後遺障害等級が認定されれば、等級ごとに労働能力喪失が問題にされるところですが、外貌塊状の場合、直接的には減収を生じたり、労働能力が喪失されることはない面があります。

そのため、従来は、外貌が職業(減収)に重大な影響を及ぼすホステス、モデル、芸能人等の場合に限って、逸失利益を肯定するという傾向がありました。

ただ、近時は、現在の職種、将来の就軌昇進、昇給.昇格及び転職の可能性を含めて労働能力喪失、逸失利益性を考える傾向にあり、醜状痕の存在のために配置を転換させられたり、職業選択の幅が狭められるなど、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合にはこれを肯定するとの理解になってきています。

これまでの判例の傾向は、被害者の性別、年齢、職業を考慮した上で、

①醜状痕の存在のために配置を転換させられたり、職業選択の幅が狭められるなどの形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、労働能力の喪失を肯定して、逸失利益を認める

②労働能力への直接的な影響は認められないが、対人関係、対社会的側面で、心理的に労働能力が減退するなど、間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められる場合には、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮し.概ね100万円ないし200万円程度の額で後遺障害慰謝料を増頗する

③直接的にも間接的にも労働能力に影響を与えないと考えられる場合には、慰謝料も基準どおりとして増額しない

と、いうことになっています。

また、外貌の醜状の場合、逸失利益が認められても、労働能力喪失期間は5~10年間のみ認めるなど、その額が制限・調整されるケースも多くなります。

過去に、私が担当した事件では、被害者は相談者の12歳の女子で、交通事故により左下腿挫創により左下腿前面に醜状が残っており、後遺障害12級に該当するとされていました。

ただ、当初の保険会社の提示では、労働能力の喪失がないとして、後遺障害の逸失利益はゼロでした。

このケースは、下肢の醜状痕であり、一般的には労働能力に影響しないことから、逸失利益性が認められにくいケースでした。

ただ、被害者は、女子であり、思春期を迎える中で、醜状痕が人格形成や学業への取組に影響し、また、 将来の就労にも影響が生じているとして、過去の類似の裁判例や文献を調査・整理などして、保険会社と粘り強く交渉しました。

その結果、最終的には、保険会社との交渉で、12級(労働能力喪失率14%)で10年間の後遺障害逸失利益として約500万円の賠償金を受け取ることができました。

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)