定年後の再雇用の賃下げについて②

先日、東京高裁で、定年退職後に再雇用され、まったく同じ仕事を続けた場合に、定年前の賃金が維持されるべきか、賃下げが許されるかが争われた判決がありました。

 

このブログでも紹介したように、1審は、「特段の事由がない限り同じ仕事なのに賃金格差を設けるのは不合理だ」として、賃下げを違法と判断しました。

 

これに対して、東京高裁は、「賃下げは社会的に容認され合理性がある」との判断を下し、1審判決を取り消しました。

その理由としては、「企業が再雇用で仕事内容を変えず、賃下げするのは公知の事実。企業には定年後の雇用確保措置が義務づけられた。人件費の無制限の増大を避け、若年層を含めた労働者全体の安定雇用を実現する必要がることを考慮すると、減額には一定の合理性がある」と指摘しました。

 

そのうえで、本件では、「年収は定年前の約2割の減額で、同規模企業の引き下げ幅よりもかなり小さい。企業が本業で赤字だと推認できる事情もあり、減額が不合理とはいえない」と判断しました。

 

その結果、有期契約の労働者と正社員との間の不合理な格差を禁じた労働契約法20条に違反しないと結論づけました。

 

この事件は、最高裁に上告されることは確実ですが、皆さんはどのように考えますか?

 

正直、なかなか難しい問題だと思います。

労働契約法の趣旨からすると1審判決が妥当な気がしますが、高齢者の雇用確保の義務づけや若年者の雇用確保など社会的に考えると、高裁判決もやむなしとも思います。

 

いずれにしても、最高裁の判断を待つしかありません。

 

労働トラブルなどでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

 

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)