有責配偶者からの離婚請求

今回は、有責配偶者からの離婚請求について考えてみたいと思います。
これは、夫が別の女性と生活するため、一方的に家を出て、別居していた場合に、夫側からの離婚請求が認められるかという問題です。

有責配偶者 写真

(有責配偶者からの離婚を提起された件における実際の解決事例は「約8年間の別居後、有責配偶者である夫から離婚訴訟を提起された事例」をご参照ください)

離婚は、互いの同意がない限り、民法770条1項1号~5号に定める離婚原因のいずれかに該当する必要があります。
そして、本件のような場合は、すでに婚姻関係が破綻していることを理由として、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するかどうかが問題となります。

これに関しては、自ら愛人をつくって家を出て行って、一方的に婚姻関係を破たんさせた者からの離婚請求を認めることは道義的にみて許されないという意見もあると思います。

この点、判例では、以前は、「このような離婚請求が認められるのであれば、妻は全く俗にいう踏んだり蹴ったりであり、法はかくのごとき不徳義勝手気ままを許すものではない」として、婚姻関係の破綻について、専ら又は主として責任のある当事者は、これをもって離婚を継続し難い事由として離婚を請求できないとしていました。

しかしながら、最近の判例は、このような場合に離婚を認めるかどうかについては、(1)別居期間の長さ、(2)親から独立して生計を営むことができない子(未成熟子)がいるか、(3)離婚により離婚請求された者が経済的に過酷な状態に置かれるか-などの事情を総合的に考慮して判断することが多いようです。

まず、(1)については、夫婦の年齢や同居期間との比較において、別居期間が相当長期間であることが必要です。実際の裁判例では、別居期間が8年前後の事案で判断が分かれており、別居期間8~9年というのが一応の分岐点といえそうです。

次に(2)については、離婚によって、経済面だけでなく精神面や家庭環境、教育環境など子どもをとりまく環境がどれだけ悪化するのか、親の監護なしでは生活できない子なのかなど、子どもの福祉という観点から十分な考慮が求められます。 裁判例では、未成熟子がいる場合は、前述のような夫からの離婚請求は否定されるケースが多いようです。

また、(3)については、別居期間中も自己の収入や資産により経済的に安定した生活をしている事案や、夫から離婚後の生活を保証するための金銭が十分に支払われる予定がある事案で、経済的に過酷な状態とはいえないと判断した裁判例があります。

つまり、最近の判例では、有責配偶者からの離婚請求であるからといって形式的に否定するのではなく、長期間の別居などにより実質的に婚姻関係が破綻しているかどうか、未成熟の子がいるかどうか、さらには離婚を申し出た側から、相手方に対して離婚後の生活を保障する金銭(十分な慰謝料)などの提供が見込まれるかどうかを総合的に判断して離婚請求を認めるかどうかを判断しようという動きになっていると言えます。

ただ、実際に、離婚が認められるかどうかは、ケースバイケースで、なかなか一概には言えないと思いますので、具体的には弁護士に相談することをお勧めします。

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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