介護施設での転倒事故について

最近、介護施設内や送迎中に、利用者である高齢者が転倒して骨折するなどの事故が増加しています。

 

まず、介護施設において発生した転倒事故によって生じた損害について、どんな場合でも介護施設側に賠償責任を問うことができるとは限りません。

 

介護施設に、賠償責任を問うことができるのは、「転倒事故につき、介護施設側に責任がある」といえる場合なのです。
責任があるとは、介護施設側に「故意または過失」がある場合です。
おおよそ、故意とは「わざと」過失とは「不注意」という意味ですから、施設側が「わざと」または「不注意」で施設利用者に傷害を負わせた場合に賠償責任が生じるということになります。

 

具体例を挙げ説明しますと、例えば単独では歩行が困難な利用者が、「施設の床が濡れて滑りやすくなっていたのに職員が放置していたため、滑って転倒して怪我をしてしまった」「介護中に介護者が階段の段差に気付かなかったため、利用者が転倒してしまった」などの場合には、施設側に責任があるといえるでしょう。

 

これに対して、「利用者が突然予測できない行動を採った結果、転倒して怪我をした」ような場合には、施設側に故意も過失も認められないことがあり、そうなると施設側に賠償責任は生じません。

 

しかし、高齢者の場合、足腰が弱くなっており、ふとしたことで転倒することは十分に予想されます。そのため、施設側はそれを想定した安全配慮義務を負っており、予測できなかったとか不可抗力であるという施設側の主張はなかなか認められないと思います。

 

ただ、施設側の責任によって事故が起こったといえる場合でも利用者側にも「落ち度」が有る場合には、全額の賠償責任は認められない、いわゆる過失相殺されることもあります。

 

多くの施設は、このような事故に備えて保険に加入しているのですが、実際に事故が起こった場合には、治療費と見舞金程度で済ませようとする傾向が多く見受けられます。

 

私が実際に受任したケースでも、骨折して後遺症が残っていた場合に、施設側からは治療費と数万円の見舞金が提示されたのですが、弁護士が介入した結果、最終的には500万円程度の賠償金が獲得できたケースがあります。

 

また、施設内での事故の場合、事故の態様や原因の把握、事故後と対応、利用者の素因、保険など複雑な要素が絡んでくることがありますし、そもそも施設との契約の中に賠償責任についての特約が含まれている場合も考えられます。

 

介護施設内や送迎中に、転倒して骨折する事故などが発生した場合には、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

 

法的なトラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

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