市営住宅条例の暴力団排除条項についての最高裁判決

平成27年3月27日、最高裁判所第2小法廷は、西宮市営住宅条例のいわゆる暴排条項について、憲法14条1項及び22条1項に違反しない、との判決を下しました。

 

本判決では地方公共団体の条例の暴排条項の憲法適合性が正面から取り上げられ、合憲判断が示されたという点で重要な意義を有するものですので、紹介したいと思います。

 

本件の最高裁への上告理由は、主に次の2点でした。

①本件規定は合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うもので憲法14条1項に違反する

②本件規定は必要な限度を超えて居住の自由を制限するもので憲法22条1項に違反する

 

これに対する最高裁の判決は

まず、①の点について

「・・・地方公共団体が住宅を供給する場合において、当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかについては、その性質上、地方公共団体に一定の裁量があるというべきである。
そして、暴力団員は、・・・集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体の構成員と定義されているところ、このような暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合には、当該市営住宅の他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを否定することはでききない。他方において、暴力団員は、自らの意思により暴力団を脱退し、そうすることで暴力団員でなくなることが可能であり、また、暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても、それは当該市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず、当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。
以上の諸点を考慮すると、本件規定は暴力団員について合理的な理由のない差別をするものということはできない。したがって、本件規定は、憲法14条1項に違反しない。」と判示しています。

 

次に、②の点について

「また、本件規定により制限される利益は、結局のところ、社会福祉的観点から供給される市営住宅に暴力団員が入居し又は入居し続ける利益にすぎず、上記の諸点に照らすと、本件規定による居住の制限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかである。したがって、本件規定は、憲法22条1項に違反しない。」と判示しています。

 

本判決が暴排条例を適法としたポイントは、(1)暴力団員は、「自らの意思」により暴力団を脱退することが可能であるとした点、(2)他の入居者等の生活の平穏が害される「おそれ」で足りるとした点だと思います。

 

皆さんはどのように考えられますでしょうか。

 

 

 

 

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