遺留分減殺請求権の行使について

2019年2月12日

相続において、自己の遺留分が侵害されていることを知った場合に、どのように対応すればよいのでしょうか。

 

まず、遺留分減殺請求権は、形成権とされており、単に「意思表示」により行えば足り、「裁判上の請求」によることまで求められていません。

 

そして、遺留分減殺請求の意思表示がなされると、当然に減殺の効果が生じます(最高裁昭和41年7月14日判決等)。
受遺者または受贈者は、遺留分を侵害する範囲で、遺贈または贈与を受けた財産を返還しなければならず、減殺請求があった日以後の果実も返還しなければなりません(民法1036条)。

 

次に、遺留分を侵害されている場合、明示的に遺留分減殺の意思表示を行うことが一般的といえます。

しかし、遺留分減殺請求の意思表示を行うことなく、遺産分割の請求などの意思表示しか行っていない場合に、遺留分減殺請求の意思表示があったと言えるのか、遺留分減殺請求権の時効の点から問題となって争われることがあります。

 

判例の中には「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。しかし、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには、法律上、遺留分減殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である」(最高裁平成10年6月11日判決)と指摘し、遺留分減殺の意思表示を認めた事例もあります。

しかし、同事例は、遺留分権利者が遺贈等の効力を争っていないことを前提としたもので、「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない」とも指摘していることから、遺留分権利者が生前贈与や遺贈の効力を争っている場合には、単に遺産分割の請求の意思表示しかしていなければ、遺留分減殺の意思表示が否定されることは十分にありうると思われます。

 

遺留分権利者が生前贈与や遺贈の効力を争っている場合に遺留分減殺の意思表示を否定した裁判例も複数存在しており、実務上は、予備的に遺留分減殺請求の意思表示をしておくべきであると考えます。

 

そのため、実務上は、相続により自己の遺留分が害されていることを知った場合には、相手方に対して、内容証明郵便により、明確に、遺留分減殺請求の意思表示を行うことが一般的です。

 

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