弁護士法23条の照会と回答拒否の損害賠償について

弁護士会照会制度とは、弁護士法第23条の2に基づき、弁護士会が、官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・照会する制度です。

 

これは、弁護士が、依頼者の委任を受けて紛争を解決しようとするとき、事実を立証するための資料を収集することは不可欠である一方で、資料は必ずしも、依頼者が持っているとは限らないので、資料を有していると考えられる官公庁や企業などの団体に対して、必要事項を照会することが必要となることがあることから、弁護士の職務の公共性から、情報収集のために設けられたものです。

 

弁護士がこの弁護士照会制度を利用するためには、所属の弁護士会に申し出て、審査を受ける必要があり、官公庁や企業等の紹介は所属する弁護士会が行うこととなります。

この照会について、官公庁や企業等は回答する義務があるとされています。

 

最近、民事訴訟の和解金を支払わない債務者の転居先について、日本郵便(旧郵便事業会社)が不当に照会を拒否したとして、愛知県弁護士会が約30万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が名古屋高裁でありました。

 

名古屋高裁の判決では、「転居先照会は一律に応じないと決めて、漫然と回答を拒絶した」と批判して、請求を棄却した一審名古屋地裁判決を変更し、同社に1万円の損害賠償を命じました。
これまで、日本郵便は転居先の問い合わせに一切応じておらず、照会拒否に関し、同社の賠償責任を認めた判決は初めてのものです。

 

名古屋高裁は、判決で、弁護士会照会について「紛争を適正に解決するための公益目的の制度」と指摘して、「財産差し押さえには住所を知る必要性が高く、日本郵便の報告義務は守秘義務を上回る」と認定しました。

 

日本郵政側は、制度が悪用されれば転居者の不利益になるなどと主張しましたが、裁判長は「悪用防止は弁護士会が対処すべき問題だ」と退けています。

 

弁護士照会制度は、弁護士の職務の公共性から認められたものであり、この判決は妥当であると思います。

 

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