法人罰について

先日、107人が死亡したJR福知山線の脱線事故で、業務上過失致死傷の罪で強制起訴されていたJR西日本の歴代3人の社長に神戸地裁で「無罪」が言い渡されました。

 

検察が起訴した元社長の裁判と今回の裁判を通じて「誰の責任も問うことはできない」という結論が示されたことになります。

遺族や専門家からは、個人しか処罰できない今の刑法は時代にあわなくなっていて、事故の再発防止につなげるために企業を処罰する「法人罰」を導入すべきだという声があがっています。

 

今回は、法人罰について考えてみたいと思います。

 

「法人罰」は企業などが「犯罪」といえる事故などを起こした時に巨額の罰金や解散命令などの刑事処罰をするものです。

 

被害者の処罰感情に適切に応えられるようにするという意味合いもありますが、最大の狙いは企業を刑罰の対象に含めることで企業に一層の安全対策を促し、社会全体の安全を高めることです。

 

例えば、原発事故を起こした東京電力の場合、仮に法人罰があって「事故を起こせば会社が存亡の危機に直面する」という強い危機感があれば、過去の巨大津波の研究結果をより深刻に受け止めて防潮堤を高くしたり、電源喪失に備えたりする対策が取られていた可能性がある、導入を求める人たちはそう指摘します。

 

この法人罰の考え方はヨーロッパで急速に広がっています。

 

これに対して、法人罰を設ければ、事故の原因究明について企業側の協力を得にくくなり、結果として事故の再発防止には必ずしもつながらないのではないか、というのが慎重、反対派の考えです。

 

最も優先すべきことは事故の真相を解明して再び起こらないようにすることです。

法人罰によって企業が事故調査に非協力的になる恐れは否定できません。

一方、企業を被告とする刑事裁判が行われれば個人裁判と違って企業の構造的問題まで踏み込んだ審議が行われ、事故原因の解明につながるという考え方もあります。

必ずしも対立する概念ではなく、どうバランスをとるかが問われているのはないでしょうか。

 

私は、基本的には法人罰の導入には賛成です。

 

皆さんはどにょうに考えられますか?

 

法的なトラブルでお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。