自転車事故と損害賠償責任について

先日、当時小学校5年生だった少年(15)が乗った自転車と歩行者との衝突事故をめぐる損害賠償訴訟で、神戸地裁が少年の母親(40)に約9500万円という高額賠償を命じる判決がありました。

 

今日は、この判決をもとに、自転車の事故と損害賠償責任について考えてみたいと思います。

 

今回の事故は、新聞報道によると、午後6時50分ごろ、神戸市北区の住宅街の坂道で、当時11歳だった少年が帰宅途中、ライトを点灯しマウンテンバイクで坂を下っていたところ、知人と散歩していた女性に気づかず、正面衝突したというものです。

女性は突き飛ばされる形で転倒し、頭を強打し、一命は取り留めたものの意識は戻らず、4年以上が過ぎた今も寝たきりの状態が続いているということです。

 

裁判で女性側は、自転車の少年は高速で坂を下るなど交通ルールに反した危険な運転行為で、母親は日常的に監督義務を負っていたと主張し、計約1億590万円の損害賠償を求めました。

これに対して、母親側は少年が適切にハンドル操作し、母親もライトの点灯やヘルメットの着用を指導していたとして過失の相殺を主張していました。

 

しかし、神戸地裁は、少年が時速20~30キロで走行し、少年の前方不注視が事故の原因と認定したうえで、事故時はヘルメット未着用だったことなどを挙げ、「指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていない」として、母親に計約9500万円の賠償を命じる判決を行いました。

 

今回賠償額が高額となった主な内訳は、①女性の将来介護費が約4000万、②将来の逸失利益が約2200万、③慰謝料が約2800万などです。

 

自転車については、運転者に交通ルールを守る意識が低い者も多く、無謀や危険な運転による事故が増加している言われています。

 

他方で、自転車の事故については、自動車と異なり、保険加入義務がないため、高額な賠償命令が出されるケースも多く、自己破産に至る例も少なくありません。

 

こうした悲惨な事故を防ぐためには、日頃から交通ルールを守った安全な運転を心がけるだけでなく、やはり万一の事故に備えて保険加入を促進すべきだと思います。

 

自転車や自動車など交通事故でお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。