京都の亀岡市の交通事故と被害者情報の漏えい

先日の京都の亀岡での交通事故に関して、亀岡署が被害者10人の連絡先(住所と電話番号)を伝えていたとともに、被害児童の通っていた学校の教頭が事故で亡くなられた母親の携帯番号を、それぞれ容疑者側の親族に伝えていたことが判明しました。

容疑者側の親族から被害者側に謝罪したいので教えてほしいと頼まれて、悪意もあなく教えたと思いますが、事故から日も浅く、葬儀なども終わっていない中で、被害者側の了解を得ることなく、一方的に加害者側に連絡先などを教えたことは被害者側の心情を考えると、単に軽率だったということでは済まされない面があると思います。

 

警察官も小学校の教員も、いずれも地方公務員ですので、地方公務員法34条により、「職務上知り得た秘密を漏らしてはいけない」という秘密を守る義務があります。

 

では、今回のケースは、地公法34条の「秘密を守る義務」の違反にあたるでしょうか。

この点、地公法上の「秘密」の定義が問題となりますが、「秘密」とは、「一般的に了知されていない事実であって、それを了知せしめることが一定の利益の侵害になると客観的に考えられるものである」とされています。

 

今回のケースでは、被害者側の住所や電話番号などの連絡先は、①警察官や教員が職務上知り得た事実であること、②被害者の氏名は別にして住所や電話番号などは公にされておらず一般に了知されていない事実であること、③被害者側の住所や電話番号も法的に保護されるべきプライバシー情報であり、それを伝えることは個人的利益の侵害に侵害になると認められることなどに照らすと、情報を漏らした警察官や教員は地公法の秘密を守る義務に違反していると考えられます。

 

そして、地公法34条の秘密を守る義務に違反した場合は、同法60条により刑罰(1年以下の懲役又は罰金)の対象となるとともに、同法29条により懲戒処分の対象となります。

今回のケースでは、情報を漏らした警察官と教員は、刑罰まで科せられる可能性は低いと思いますが、懲戒処分(減給又は戒告程度)を科せられ可能性は高いと思われます。

 

また、それ以外では、被害者側から県や市に対して警察官や教員が秘密を漏らしたことにより、精神的損害を被ったことを理由として国家賠償法により慰謝料などの損害賠償請求が行われることも予想されます(この請求が認められる余地は十分にあると思います。)。

 

いずれにしても、警察や学校は、加害者側の親族から被害者側に謝罪したいので連絡先を教えてほしいと懇願されたとしても、安易に一方的にそれを教えるのでなく、被害者側に対して加害者側の意向を伝えたうえで、連絡先を教えていいかという承諾を当然得るべきだったと言えます。

 

それをせずに、安易に情報を漏らしたことは、単に軽率だったと謝罪すれば済まされる問題ではなく、警察や学校は、大いに反省し、コンプライアンスという面からも情報管理を徹底し、再発防止に努めるべきでしょう。