弁護士に5億相当贈与、「奇異」と遺言無効判決!

先日のニュースで、認知症の女性が、親族ではない弁護士に計約5億円相当の遺産を贈与するとした遺言書は無効だとして、女性のめいが起こした訴訟の判決があり、裁判所が遺言は無効と判断したとの報道がありました。

 

判決によると、女性は呉服店を経営していたが、2003年11月頃に認知症を疑わせる症状が出ていたということです。

そうした中で、弁護士と店の経営移譲や遺産相続などを相談して「私のいさんは後のことをすべておまかせしている弁ご士にいぞうします」などという遺言書を作り、92歳で死亡した。

その後、弁護士は遺言書を基に預貯金計約3億2700万円や、呉服店の株式など約2億円相当の贈与を受けたというのが今回の事件です。

 

 

判決は、めいを女性の相続人と認定し、裁判長は「赤の他人の弁護士に全遺産を遺贈しようとするのは奇異だ」と指摘したとのことです。

 

この判決を2つのことが重要だと思います。

一つは、兄弟やその子が相続人の場合、遺留分がないということです。

 

すなわち、相続人は、配偶者のほかは、第1位順位が子ども、第二順位が親などの直系尊属、第三順位が兄弟姉妹となります。

そして、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子が代襲相続します。

ただ、この場合には、兄弟姉妹やその子には遺留分は認められていないため、遺言書で自由に相続を指定できます。

 

したがって、本件のように、相続人がめいだけの場合は、遺言で誰かに全て遺贈すれば、めいの相続分はゼロになります。

 

次に、認知症の疑いのある方が遺言を作成する場合は、注意が必要です。

このような場合には、医師の立ち会いや診断書など、遺言を作成するだけの十分な判断能力があったことを証明する必要があるということです。

そうでなければ、今回のケースのように遺言の作成能力が問題となり、後日、遺言が無効となる可能性があるということです。

 

本件の事実関係はわかりませんが、遺言に関しての重要な法律問題を含むと思い、紹介しました。

 

遺言や相続でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所の弁護士までご相談ください。