検察審査会の強制起訴による小沢元代表の無罪

検察審査会による強制起訴された民主党の小沢元代表が東京地裁で無罪の判決を受けました。

小沢元代表は、検察庁の捜査では、嫌疑不十分で不起訴とされましたが、検察審査会で2度の議決を経て、強制起訴されていました。

 

今日は、この検察審査会と強制起訴制度について考えたいと思います。

検察審査会は、選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を受けている者)を裁判にかけなかったことのよしあしを審査をする機関です。

 

審査をした結果,更に詳しく捜査すべきである(不起訴不当)とか、起訴をすべきである(起訴相当)という議決があった場合には、検察官は、事件を再検討します。

起訴相当の議決に対して検察官が起訴しない場合には、改めて検察審査会議で審査し、その結果、11人の検察審査員のうち8人以上が「検察官が不起訴にしたのは正しくなく起訴して裁判にかけるべきだ。」という判断をしたときは、起訴すべき旨の議決(起訴議決)をします。

この場合には、裁判所から指定された弁護士が、検察官に代わって公訴を提起することになります。

 

検察審査会の結論に基づいて、検察官が再検討した結果、起訴した事件は1,400件を超え、その中には、懲役10年といった重い刑に処せられたものもあり、その活動は十分に評価できると思います。

ただ、2009年以前は、検察審査会が行った議決に拘束力はなかったため、「不起訴不当」や「起訴相当」と議決された事件であっても、結局は起訴されない場合も少なくありませんでした。

そして、2009年の法改正により、起訴議決による強制起訴制度が導入され、これまで、小沢元代表のほか、明石歩道橋事故による明石署の副署長などの例がありますが、強制起訴により有罪となった例はまだありません。

 

しかし、私は、小沢元代表の有罪か無罪かという判断は別にして、市民の声を反映させるという検察審査会の活動は高く評価しますが、強制起訴制度については少し疑問を持っています。

 

とうのは、強制起訴制度がなくても、検察審査会はこれまで十分な成果を上げてきたと思います。

そして、刑事被告人として起訴される者の負担や不利益を考えると、起訴不起訴の決定は、やはり国家機関である検察官が世論に惑わされることなく責任をもって行うべきであり、そうでなければ、強制起訴の結果、無罪となった場合の責任の所在が不明確になると思います。

 

検察審査会は、むしろ国民を強制起訴する権限ではなく、国民の冤罪を晴らす再審請求を強制できる権限を与えてはどうかと思います。

刑事訴訟法では、再審請求は検察官もできることになっていますから、検察審査会が再審査請求をすべきであるとの議決をした場合には、最終的に強制的に再審請求できる制度を設けてはと思います。

 

国民・市民の声は、訴追する側だけではなく、冤罪被害を是正する側にも反映させてはどうでしょう。