大阪市の桜宮高校入試中止と予算の支出停止

大阪市立桜宮高校体育科2年の男子生徒がバスケットボール部顧問の教諭から体罰を受け、自殺した問題で、橋下徹市長は,生徒が在籍した同校体育科とスポーツ健康科学科の今春の入試中止と、同校運動部の顧問教諭全員の異動を実施しなければ、関連予算を支出しないと表明したとの報道がありました。

 

体罰についてはもちろん許せない行為だと思いますが,今日は,この入試中止や人事異動をしなければ,関連予算を執行しないという橋下市長の発言について考えてみたいと思います。

 

橋下市長は,地方自治法上,「予算執行権は僕にある」として入試に必要な予算支出を認めない意向のようです。

確かに,地方自治体の予算の執行権や財務会計上の権限は,地方自治法149条により長である橋下市長にあります。

 

 

他方で,学校の教員の人事権や入試など学校の運営などは,地方教育行政の組織及び運営に関する法律により教育委員会に権限があります。

 

そうした場合に,上記の市長の予算執行の権限は無制限に認められるのでしょうか?

 

この点,最高裁判決(最判H4.12.15)では,「地方教育行政の組織運営に関する法律は,地方公共団体の区域内における教育行政については、原則として、これを、地方公共団体の長から独立した機関である教育委員会の固有の権限とすることにより、教育の政治的中立と教育行政の安定の確保を図るとともに、他面、教育行政の運営のために必要な、財産の取得、処分、契約の締結その他の財務会計上の事務に限っては、これを地方公共団体の長の権限とすることにより、教育行政の財政的側面を地方公共団体の一般財政の一環として位置付け、地方公共団体の財政全般の総合的運営の中で、教育行政の財政的基盤の確立を期することとしたものと解される。」としたうえで次のように述べています。

 

「教育委員会がした学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関する処分(地方教育行政の組織及び運営に関する法律二三条三号)については、地方公共団体の長は、右処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、右処分を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのが相当である。けだし、地方公共団体の長は、関係規定に基づき予算執行の適正を確保すべき責任を地方公共団体に対して負担するものであるが、反面、同法に基づく独立した機関としての教育委員会の有する固有の権限内容にまで介入し得るものではなく、このことから、地方公共団体の長の有する予算の執行機関としての職務権限には、おのずから制約が存するものというべきであるからである。」

 

このような最高裁判例に照らせば,今回の橋下市長の意向は,行き過ぎの感があり,少なくとも法的に予算を執行しないなど強行した場合には,教育委員会の独立性を侵すものとして,違法とされる可能性があると思います。

 

皆さんは,この問題についてどのように考えられますか?