薬のネット販売に関する最高裁判決

インターネットを使った薬の販売について、先日、最高裁判所はネットでの販売を一律に禁止した国の規制は無効だという判決を言い渡しました。

 

この裁判は、医薬品などのネット販売を行う東京の「ケンコーコム」などが起こしたもので、厚生労働省がリスクの低い一部を除き、インターネットによる薬の販売を4年前に省令で禁止したのは不当だと訴えていました。

 

1審の東京地方裁判所は「規制は必要だ」と訴えを退けましたが、2審の東京高等裁判所は去年4月、逆にネット販売を認める判断を示し、国が上告していました。

 

11日の判決で、最高裁判所第2小法廷の竹内行夫裁判長は、「薬のネット販売の禁止は憲法が保障する職業の自由を制約することになるが、現在の薬事法には一律に販売を禁止すべきだという趣旨が含まれているとは言えない。国の規制は法律が委ねた範囲を超えるもので、違法で無効だ」と判断し、国の上告を退けました。

 

医師の処方箋がなくても薬局などで購入できる「一般用医薬品」については、平成21年に施行された改正薬事法で、副作用のリスクに応じて第1類から第3類の3つに分類され、販売時に薬剤師らが適切に情報提供するよう規定しました。

 

販売方法については法律では規定されず、厚生労働省が省令で具体的に定めました。 この中で、アレルギーの薬や重い副作用が報告されている胃薬など、特に副作用のリスクが高い「第1類」と、リスクが比較的高いとされ、多くのかぜ薬や解熱剤が含まれる「第2類」については、薬局などでの対面販売が義務づけられました。

 

そのため,インターネットでの販売は、ビタミン剤や整腸剤などリスクが比較的低いとされる「第3類」だけに限定されました。

 

今回の最高裁判決は、この第1類及び第2類のネット販売の禁止する省令を違法とするものです。

 

今回勝訴したケンコーコムでは、早速、第2類の医薬品のネット販売を再開するとともに、安全性を確保するため、現在、薬剤師が顧客と副作用についてインターネットを使った電話やメールでやり取りしたり、過去に購入した薬を顧客ごとに管理し、同じ薬を大量に購入できない仕組みを導入したりしているということです。

 

この結果、薬のネット販売は現在の法律の下で事実上解禁されることになり、離島の居住者や障害者など薬局で薬の購入が困難な方は便利になる反面、他方で、副作用の危険のある薬のネット販売について不安があることも確かです。

今後、国は新たな規制が必要かどうか検討を迫られることになりそうです。

 

皆さんは、この問題についてどのように考えますか?