交通事故(京都の亀岡無免許暴走事故の賠償責任)

2012年4月24日

昨日、京都の亀岡市で、無免許運転の18歳の少年の軽自動車が集団登校中の児童らに突っ込み、2人が死亡し、2人が重体、6人が重軽傷を負うという悲惨な事件・事故が発生しました。

何の責任もないのに、このような事故に巻き込まれたことにより、亡くなられた方のご冥福とケガをされた方の一日も早い回復を祈るばかりです。

 

今日は、本件のような未成年の無免許運転の場合の賠償責任がどうなるのかということについて考えたいと思います。

まず、運転した少年は、未成年とはいえ、18歳であり、責任弁識能力は認められますので、民法709条の不法行為として損害賠償義務を負います。ただ、運転者していた少年は、18歳という未成年で、かつ無職ということなので、恐らく損害を賠償する能力はないと思われます。

 

次に、運転していた少年の親(親権者)が賠償責任を負うかということについては、基本的には、少年は18歳であり、責任弁識能力がある以上、親(親権者)が賠償責任を負うことはありません。

しかし、親権者が子を監督すべき義務が生じるような事情、例えば日頃から車を乗り回していたとか、たとえばその車を容易に運転できる状況においたとか、個別の事情が認められるのであれば、親権者にも別途損害賠償責任が生じる可能性もあります。

ただ、本件の場合に、親権者が賠償責任を負うかについては、①少年がすでに18歳であること、②報道では過去に無免許運転の事実はあるものの、今回の無免許運転の事実を知らなかったと言っていること、③親権者が少年の無免許運転を黙認していたような事実はないようであることなどに照らすと、親権者の賠償責任を問うことは難しいように思えます。

 

それから、少年に事故車両を貸していた所有者の責任が問題になりますが、その前に、所有者が事故車両を対象に加入していた自賠責保険や任意保険が支払われるのかについて検討する必要があります。

 

結論から言うと、無免許運転であっても、被害者救済の観点から、自賠責保険・任意保険の対人賠償保険のいずれも、保険契約上の免責(保険金を支払われないケース)にされず、保険金は支払い対象となります。

ただ、任意保険の場合、加入していなかったり、仮に加入していても契約上に年齢条件がある場合には、年齢条件以外の運転者が起こした事故では保険金は支払われません。本件では、仮に加入していても、運転者は18歳なので、年齢条件に抵触し、任意保険の対象外となる可能性があります。

その場合、自賠責保険は、死亡一人当たり最高3000万円(後遺障害 最高4000万円)  障害一人当たり最高120万円 が限度なので、それを超える損害は自賠責保険では補填されないことになります。

 

そこで、自賠責保険を超える損害部分について、事故車両の所有者に対して損害賠償請求ができるかが問題となります。

 

この点、自動車賠償責任法は、第3条により、「自己のために自動車の運用の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任に任ずる。ただし、自己及び運転者が、自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。」と規定されています。

「自己のために自動車を運行の用に供する者」、すなわち「運行共用者」の例としては、自己所有の車を運転する者、夫名義の車を妻が運転中に事故を起こした場合の夫、運転手が事故を起こした場合の運送会社などの他、本件のように車を貸した友人が事故を起こした場合の貸主などがあります。

 

したがって、本件の場合には、運転していた少年に事故車両を貸した所有者は、上記の自賠責法3条のただし書の要件を全て満たさない限り(恐らく無理でしょう)、被害者に対する損害賠償責任を免れることはできないだろうと思われます。

 

これ以外にも、無免許であることを知りながら、同乗していた者も、被害者に賠償責任を負う可能性があると思います。

 

いずれにしても、何の落ち度もないのに大切な人を失ったり、ケガしたりした人の苦しみや怒りはいかほどかと思います。せめて、事故を起こした少年への処罰はもちろん、きちんとした被害者への賠償が行われるべきだと思います。

 

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