NHK未払い受信料の時効

先日のニュースで,NHKの未払い受信料について督促されてからいつまでさかのぼって支払うべきかが争われた裁判があり,東京高裁(南敏文裁判長)が,「5年たてば時効」との判決を言い渡したとの報道がありました。

 

今日は債権の消滅時効について考えたいと思います。

 

民法では,「債権は,10年間行使しないときは,消滅する」(民法167条)と規定されており,10年経過すれば,債権が消滅するため,債務者は支払わなくても良いとされています。

 

また,時効の起算点(スタートの時点)は,「消滅時効は,権利を行使することができる時から,進行する」(民法166条)とされています。

そして,この「権利を行使することができる時」というのは,法律上行使が可能であれば,これにあたり,時効がスタートします。

単に事実上行使できない事情があったという場合でも,時効は進行します。

例えば,支払期限が定められている場合は,その期限を経過すれば,催促がなくても時効はスタートします。

 

今回のNHKのケースは,このうち,消滅時効の期間が争われました。

つまり,通常の債権は,上記のとおり消滅時効は10年間ですが,民法などでは,それよりも短い期間で消滅する時効が定められている場合があります。

例えば,毎月又は毎年,定期的に支払う家賃などは,民法169条により,5年間とされています。

あと,労働契約の賃金等は2年間,飲食店やホテル等の料金等は1年間とされています。

 

今回,NHK側は,裁判で「民法の原則では一般の債権(借金)の時効は10年だ」,「全国には204万人を超える未納者がいるが、わずか5年のうちに全員に対して法的手続きをするのは非現実的だ。『逃げ得』を許し、不公平になってしまう」と訴えていたようです。

 

これに対して,判決は、2カ月ごとに支払う受信料の性質から、家賃などと同様に時効は5年と判断しました。また,不公平ということについても,「そもそも受信契約を結んでいない人も多く、公平性は重要といえない」と述べています。

 

法的に見れば,NHK側の主張には無理があり,東京高裁判決が正しいと言わざるを得ないと思います。

 

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