神戸市外郭団体派遣職員への人件費にかかる住民訴訟

2012年4月21日

昨日、最高裁で、神戸市の外郭団体派遣職員への人件費支出にかかる住民訴訟について判決がありました。

 

この事件の概要を簡単に紹介しますと、神戸市が福祉、医療、住宅などをサービスを行っている外郭団体に職員を派遣したところ、派遣法という法律では、その派遣した職員の給料は、条例で定めて支給しなければならないという規定になっていたにもかかわらず、これを神戸市が条例の規定によらずに、外郭団体に対してその人件費相当額を補助金として支給していました。

このことが、派遣法に違反し、違法であるため、その人件費相当額の補助金について、市長個人に対する損害賠償と外郭団体に対する不当利得返還請求を神戸市民である住民が住民訴訟により求めたものです。

 

この事件については、高裁において、神戸市の上記支出が違法とされ、神戸市長個人に対する約55億円という巨額の損害賠償請求を認めるとともに、神戸市議会の債権放棄議決を無効とされたため、その行方が非常に注目されていました。

 

今回、最高裁は、市長個人の賠償責任については、市長には違法な支出について過失がなかったとして否定するとともに、外郭団体に対する不当利得返還請求については、市議会の債権放棄議決を有効としました。

 

確かに、外郭団体への派遣職員の人件費について、当時、多くの自治体で神戸市と同様に、条例によらずに補助金として支出していたケースが多く、総務省もそれを否定していなかったこと、仮に神戸市が補助金によらずに、条例に基づいて人件費を直接支給していたとしても、同額の支出が必要であり、市に実質的な損害はなかったことなどに照らすと、市長に過失がなかったという最高裁の判断は妥当ではないかと思います。

 

いずれにしても、私は、兵庫県の職員であった際に、この事件で神戸市の職員の方が非常に苦労されているのを聞いていましたので、少し感慨があります。

神戸市の法務課の皆さん、本当に良かったですね!!

 

ただ、自治体法務という面からみれば、この事件については、平成19年から,同じ裁判が1次から6次?ぐらいまで提起されていますが、最初の1次訴訟の神戸地裁の段階で、神戸市が勝訴していれば、これほどの時間と労力を費やすことはなかったと思います。

 

やはり、自治体法務においては、紛争の予防法務とともに、訴訟になった場合の初期対応が何よりも重要であると思います。

(ただ、自治体法務、特に住民訴訟は、地方自治法などの行政法令や行政実務に相当精通している必要があり、弁護士でも難しい分野だと思いますが・・・。)

 

当時事務所では、住民訴訟や自治体法務にも力を入れていますので、自治体の方はどうぞお気軽にご相談ください。

 

なお、議会による債権放棄の問題に関しては、また明日にでも書きたいと思います。