「カネミ油症」の被害者救済法成立

今国会で,西日本一帯で起きた食品公害「カネミ油症」の被害者救済法が,被害発生から44年経過してようやく成立しました。

 

ご存知の方も多いと思いますが,カネミ油症は,カネミ倉庫(北九州市)がつくった食用の米ぬか油を使った料理などを食べた約1万4千人が全身の皮膚疾患や、手足のしびれなどの症状を訴えた食品公害です。

 

製造過程で、ポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシン類が混入したのが原因とされており,1968年に被害が表面化しました。

 

被害者は高齢化していますが、根本的治療法はなく、今も健康被害に苦しんでいます。また,その影響は孫にも及ぶとされています。,

 

認定された患者は今年3月末現在でわずか1966人で、うち生存者は31都府県の1370人にとどまっています。

夫婦や同居の家族でも認定、未認定に分かれる例もあり,認定されてもこれまでの救済策は、カネミ倉庫からの医療費の一部支払いなどで貧弱でした。

 

今回の救済法は超党派の議員立法で成立したもので,具体的な施策としては,患者を対象とした健康実態調査を国が毎年実施し、調査に協力した人には国とカネミ倉庫が生活支援金などとして年24万円を支給するというものです。

 

未認定の同居家族らが新たな救済対象となり、支援金の支給は1800人程度に上るとみられています。

 

救済法は、国に救済策を実施する責務があると明記し、国が必要な施策を講じると規定しています。

ただ、患者らが長年望んでいた国が医療費などを直接支給する形は結局、実現しませんでした。

「間接支援」にとどまったのは、「国に責任はない」とする厚生労働省の変わらない姿勢が反映された結果といわれています。

 

なお,救済法には患者の認定基準の緩和、政府が3年をめどに救済策を再検討することなども盛り込まれるとともに,付帯決議で、救済策の実施状況を検証する関係省庁、カネミ倉庫、被害者の定期協議を設けることを求めています。

 

これを第一歩として,「カネミ油症」の被害者救済がより進むことを期待しています。