認知症と遺言能力

本日は、最近増加している認知症の人の遺言能力について考えてみたいと思います。

 

遺言とは、遺言者が自己の死後の法律関係のうち、法律で定められた一定の事項について、法律に定められた方式で行った最終意思の表示です。

従来はあまり利用されていなかったのですが、近年、国民の意識の変化にともなって、利用する人が大幅に増えています。

 

しかし、遺言は、法律に定められた方式に従ってなされていても、その遺言が法律上当然に有効となるわけではありません。

民法上、遺言者が遺言をする時に一定程度以上の判断能力(遺言能力)を有していることが必要です。

この遺言能力の有無については、例えば、94歳の老人の公正証書遺言が有効とされた裁判例がある一方で、88歳9か月の老人の公正証書遺言が無効とされた裁判例もあります。

 

遺言者の年齢だけではなく、遺言者がその遺言をした動機、遺言者の病状に関する医師の診断、遺言の内容の単純さや複雑さなど、それぞれの事例の個別具体的な事情によって、裁判所の判断も異なります。

そのため、公正証書だから間違っていないとはいえず、認知症の程度についての医師の診断などさまざまな事情から、遺言時に遺言能力がなかったと判断されると、公正証書遺言は法律上無効なものとなります。

 

ただ、認知症の方であっても、遺言時に判断能力がはっきりしていれば、遺言は有効となります。

したがって、認知症の方が遺言を書く場合は、遺言時に判断能力があるとの医師の診断書や判断のもとに行う必要があります。

 

このような場合には、やはり弁護士など法律の専門家に依頼をして、あとで無効と言われないような対策をきとんと講じた方がいいと思います。

 

遺言の作成などについてお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。