5月2019

遺産分割方法の指定と代襲相続

今回は具体的なケースに沿って,遺言の問題について考えてみたいと思います。

 

例えば,XさんにA,B,Cの3人の推定相続人がいたとします。Xさんは,住んでいた自宅についてはAさんに譲りたいと思い,遺言に,「自宅についてはAに相続させる」と書きました。しかし,AさんはXさんより先に死亡してしまいました。この場合,その「自宅についてはAに相続させる」という遺言の効力はどうなるのでしょうか。
これは,特にAさんに息子のDさんがいた場合に問題となります。

 

一般に,相続人が相続の時点で死亡していた場合,その相続人の子(正確には直系卑属)が,相続人としての地位を引き継ぎます。
これを代襲相続といいます。

 

そうすると,Aさんに相続させるという遺言についても,Bさんが代襲相続できるようにも考えられます。
しかし,この点については,有名な最高裁判例(最高裁平成23年2月22日第三小法廷判決)があります。
それによると,「相続させる」旨の条項と他の遺言書の記載との関係,遺言書作成当時の事情,遺言者の置かれていた状況といった事情を見て,遺言者がその相続人の代襲者に相続させるつもりであったとみるべき特段の事情がない限り,その遺言は無効になります。

 

つまり,今回でも,XさんがAさんの子であるDさんに譲るつもりであったという事情が読み取れなければ,「自宅をAに相続させる」という遺言は無効となり,自宅は原則として,法定相続分に従ってBCDの3人で分けることになります。

 

もし,XさんがBさんやCさんには絶対に自宅を譲りたくないという気持ちがあるのであれば,遺言書の中に「Aが死亡していた場合には,Dに相続させる」といった条項を入れるべきことになるでしょう。

 

遺言書は個人で作成することが可能ですが,記載内容によっては,後々の無用な紛争のタネになりかねません。
遺言書の内容について法律家のアドバイスを受けることは,こういった紛争を防ぐのにとても効果的です。

 

当事務所では遺言にまつわる事件も多数取り扱っております。
遺言に関することでお悩みの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

DNA鑑定で自分の子どもでないとわかったとき

夫婦の婚姻期間中に、生まれた子どもについて、夫である父親が自分と子のDNA鑑定をした結果、自分の子どもではないとわかった場合に、法律的にはどうなるのでしょうか。

 

まず、夫と妻の婚姻関係はどうなるのでしょうか。

 

この点、DNA鑑定をした結果、子どもが夫の血を引いていなかった場合、妻が他の男性と性的を持ったことは確実です。

そして、妻が婚姻期間中に不貞行為をしたことが明らかであれば、夫からの離婚が認められる可能性が高くなります。

 

また、妻が、他の男性の子どもであることをひた隠しにし、夫の子であるかのような虚偽の説明をしていた場合は、それ自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。

 

次に、父親と子どもの親子関係はどうなるのでしょうか。

 

これについては、生物学上、親子ではないことが判明したい以上、法的な親子関係も当然なくなると考える方も多いかと思います。

 

しかし、この点については、法律上は、子どもが自分の血を引いていなかったことが明らかになったとしても、妻が婚姻期間中に懐胎した子は夫の子と推定されるため(民法772条1項)、夫の子として扱われます。

 

そのため、この法律上の親子関係を解消しない限りは、養育費の支払義務が発生します。

 

そこで、夫側としては、この推定を覆すため、嫡出否認の訴えを提起する必要があります。

しかし、嫡出否認の訴えは、「子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない」と定められており(民法777条)、現実には難しい場合が多いと思われます。

 

嫡出否認の訴えが提起できない場合は、親子関係不存在確認の訴えを提起することになります。

この訴えについては、期間制限もないため、嫡出否認の訴えに比べると利用しやすいように思えます。

 

しかしながら、以前のブログでも紹介しましたが、過去の判例では、DNA鑑定で生物学上の父子関係が認められなかったにもかかわらず、法律上の親子関係の不存在を認めなかった例もあります(最高裁平成26年7月17日)。

 

この結論に対しては、理不尽と思われる方も多いと思われますが、子どもには罪はないため、子どもの福祉という観点から、裁判所は、このような判断をしたのでしょう。

 

したがって、生物学上の父子関係が認められない場合でも、養育費は支払わなければならない場合があるということです。

 

ただ、妻に対して、慰謝料を請求できる可能性は十分にあると思われます。

 

親子関係や離婚などの法的なトラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

交通事故による耳鳴りや難聴

交通事故により頭部や頚部を受傷した場合に、耳鳴りや難聴などの症状が出ることがあります。

例えば、頸椎捻挫、いわゆるむち打ち損傷の約7%で耳鳴りや難聴が発症すると言われています。

 

ただ、被害者の方は、交通事故直後は、頭痛や頚部痛などの痛みが強く、耳鳴りや難聴に気づかない場合が多くあります。

また、耳鳴りや難聴に気づいても、しばらくすると治まるのではないかと思ったり、整形外科の医師に言ってもと考えたりして、

主治医にきちんと症状を申告していないケースが見受けられます。

 

他方で、交通事故からしばらく経過した後、数週間~1か月以上経過した後で、耳鳴りや難聴を訴えても、保険会社は交通事故の直後に訴えがなかったことを理由に、耳鳴りや難聴は交通事故が原因ではないなどとして、損害賠償を否定する傾向にあります。

 

さらに、耳鳴りや難聴があるために、耳鼻科に受診しても、その医師が交通事故による受傷についての経験が乏しい場合などは、きとんとした治療が受けられなかったり、十分な後遺障害の診断書の作成ができないために、耳鳴りや難聴などの後遺障害があるにもかかわらず、後遺障害の認定が受けられないケースもあります。

 

したがって、交通事故に受傷した後に、耳鳴りや難聴の症状がある場合には、主治医にきちんと訴えてカルテに記載してもらうことが、まず重要です。

できれば、自覚症状があれば、事故後1週間以内には、主治医に耳鳴りや難聴の症状を訴えて、カルテに記載しておいてもらうことが望ましいでしょう。

 

そのうえで、耳鳴りや難聴について、交通事故や労災などを多く扱っている信頼できる耳鼻科に受診することが大切です。

 

 

耳鳴りや難聴は、耳鳴り検査で耳鳴りが確認され、かつ聴力検査で感音難聴が確認されている場合は、後遺障害の障害等級12級が認定されます。

後遺障害12級が認められると、慰謝料だけでも280万円程度(裁判基準)が認められます。

 

ただ、上述のとおり、事故後にきちんと主治医に症状を訴えていなかったり、受診した医師が十分な知識や経験がなかったために、耳鳴りや難聴の後遺障害があるにもかかわらず、後遺障害の認定を受けていないケースが相当あると思われます。

 

そして、交通事故で、耳鳴りや難聴などの症状がある場合は、早期に、その分野に精通した弁護士への相談することをお勧めします。

 

当事務所では、交通事故を原因とする耳鳴りや難聴のケースを多く取り扱うとともに、ケースによっては、信頼できる医療機関(耳鼻科)を紹介することも可能です。

 

交通事故による耳鳴りや難聴でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

私立学校の学費と養育費

子供のいる夫婦が離婚をする場合,その子供の養育費を決めることになります。しかし,その子供が私立の学校に通っているために,授業料等の学費が高いという場合,子供を監護する親だけでこの学費を支払うことになれば,一方だけに過大な負担がかかることでしょう。

 

それでは,この私立学校の学費を養育費に加算して,父母で分担することはできないのでしょうか。

 

まず,養育費の金額は,父母の話し合いによって定めることができますので,学費も分担するという合意ができれば,支払ってもらえることになります。

 

しかし,話し合いがまとまらず,家庭裁判所が審判という形式によって,これを決める場合には,実際に家庭において生活費として何の項目にどれだけの費用がかかっているかという詳細にはあまり立ち入らず,父母の収入と子供の数を基礎として,標準的算定方式という方式に則って,ある程度機械的に金額を決めてしまうのが一般的です。

 

そうすると,子供が私立学校に通っているという事情も考慮してもらえなさそうにも思えます。

 

ところが,子供の私立学校の学費については,養育費を支払う方の親が私立学校への進学を承諾していた場合に,私立学校の費用を父母で分担することを認める審判例があります(神戸家裁審判平成28年7月1日等)。

 

また,父母の収入,学歴,社会的地位等から私立学校への進学が不合理ではないといえる場合には分担が認められるべきであると考えられています(松本哲泓「婚姻費用・養育費の算定」~裁判官の視点に見る算定の実務~ p129参照)。

 

当事務所では,離婚に関する事件も多く扱っております。
離婚にまつわるトラブルでお悩みの方は,お気軽に当事務所までご相談ください。

住民訴訟について①

住民訴訟とは、地方公共団体の住民が、地方公共団体の長などの執行機関又は職員による違法な公金支出などの財務会計上の行為又は怠る事実の是正を求める訴訟であり、住民参政の一環として、地方自治法において、特別に認められた訴訟です。

 

住民訴訟の目的としては、(1)住民の直接参政の手段、(2)地方公共の利益の擁護、(3)違法な地方財務の管理・運営に対する司法統制の手段という3つがあげられます。

 

住民訴訟は、アメリカの納税者訴訟(Tax payer’s suit)にならって、昭和23年の地方自治法改正により導入されましたが、かなり日本的変容を遂げており、昭和38年に現在の形になりました。
また、制定後、昭和63年頃まではほとんど使われなかった(年平均50件ほど)が、平成に入って活用されるようになってきました(年平均100件〜数百件)。
これは、情報公開制度の充実や市民オンブズマンなどが不正な公金支出の是正のために活用することによるもので、今後まだまだ増えてゆく可能性があると思われます。

 

住民訴訟の特徴の一つとしては、住民であるというだけで、自己の法律上の利益にかかわらない資格で地方公共団体の機関による違法な財務会計行為の是正、損害の回復を求めることができることが挙げられます。
また、住民訴訟には、違法な財務会計上の行為などに関わった当該職員に対する損害賠償請求(4号訴訟)など公務員の個人責任を追及することができるという特徴もあります。

 

住民訴訟に対して、的確に対応するためには、地方自治法その他自治体法務などの専門的知識や経験が求められます。
当事務所では、行政事件や住民訴訟に精通した弁護士が対応しますので、どうぞお気軽にご相談ください。