9月2018

夫婦の一方がした第三者との契約,借金について

前回は,夫婦間の借金について説明しました。今回は,夫婦のどちらか一方が第三者から借金等をした場合,他方に返済義務があるのか,について,考えてみます。

 

例えば,妻が夫に断りなく,自己名義でキャッシングなどで借金をして,子どもの習い事の費用に充てた場合,夫はその借金を妻に変わって返済しなければならないのでしょうか?

 

夫婦の一方が第三者との間で行った契約や借金については,その契約や借金が,「日常の家事に関する債務」かどうか,が判断の決め手となります。
「日常の家事」とは,「夫婦の共同生活に通常必要とされる事務」のことで,夫婦は連帯して責任を負うと定められているからです(民法761条)。

 

例えば,夫が家族と共に住む自宅で使う家具や電化製品を,夫名義で割賦購入する契約をしましたが,その支払いが滞った場合,妻に支払う義務が生じるのです。妻が「夫が選んだ冷蔵庫だから支払わない」などと言ったとしても,売った側は夫婦に売ったと考えるのが普通なので,妻の言い訳は通用しません。

 

ただ,どのような契約が「日常の家事」の範囲内か,の判断は難しく,裁判になることもあります。
裁判で,連帯責任が認められなかった例としては,妻が生後6ヶ月の赤ちゃん向けに,英語教材セットの割賦契約をした事案があります。英語教材セットの価格が夫の月収の3倍を超え,赤ちゃんにすぐに必要な教材ではなく,販売業者が「ご主人に内緒で」と言っていたことから,この契約は「日常家事」の範囲を超え,夫に連帯責任を負わせることはできない,と判断しました(平成14年12月26日東京簡裁)。

 

逆に,認められた例として,妻が幼稚園児の子どものために英語教材を購入する契約をした事案で,夫婦の生活水準に照らして不相当に高額ではないこと,妻が子どもの教育のために購入した教材であることから,夫の連帯責任を認めました(平成10年12月2日東京地裁)。

 

冒頭の事案のような「子どもの習い事」といっても,その家庭の収入や社会的な地位,契約の内容や代金等によって「日常家事」にあたるか否かは変わってきます。

 

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夫婦間の借金について

夫婦の間でお金の貸し借りをした場合に、返済する必要はあるのでしょうか。

 

婚姻中に夫婦の間で借金をした場合でも,原則としては,返済する必要があります。

例えば,妻が自分の親の借金返済のために夫からお金を借りた,夫が趣味のギャンブルのため妻からお金を借りた,等の場合は,返してもらえます。

 

利息や返済の時期は,夫婦間の合意(契約)に基づきますが,夫婦間のことなので,合意をしていなかった場合は,利息は法定利息,貸した方が返済時期は相当の期間を定めて催告(返済するように伝えること)した後,ということになります。

 

 

一方で,夫婦は,婚姻中に生じた費用(婚姻費用)を分担します(民法760条)。婚姻費用とは,その家庭の収入や地位などに基づいて,通常の社会生活を維持するために必要な生活費,のことです。

 

そうすると,夫婦間の借金が,この婚姻費用に充てるためだった場合は,もともと分担するものなので,返済しなくても良いことになります。例えば,専業主婦の妻が,夫から受け取る毎月の生活費が足りなくて,夫から借金をして,日々の食費に充てる,子どもの塾代に使う,などが理由なら,妻は夫に,返さなくてもよいことになります。

 

 

夫婦間の借金が問題となるのは,夫婦関係が悪化したときや,離婚するときが多いでしょう。

 

 

離婚時には,一般には,婚姻中に築いた財産や債務を分ける財産分与という清算をします。財産分与は,夫婦が協力して得た財産や,共有財産を平等に分ける作業です。この際,夫婦間に借金があれば,その借金の清算をすることになります。

 

 

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