6月2018

賃貸借契約と敷金について(2)

前回に続いて,敷金について,考えます。

 

次のような事案の場合,Aはどうしたらいいでしょうか。
(事案)
AはBに,アパートを賃料月額10万円で貸しています。契約の時に,AはBから,敷金として20万円を受け取っています。賃貸借契約の期間が満了となり,賃貸借契約が終了しました。そのため,AはBにアパートを明け渡すよう請求しました。Bは,賃貸借契約の終了自体については合意していますが,「Aから敷金を返金してもらうまではアパートから退去しなくていいはずだ」と言って,住み続けています。

 

さて,Bの言い分には,①敷金の返還を請求できる時期,②敷金の返還額,という2つの問題が含まれています。

 

①の敷金の返還時期について,判例により「賃貸借終了後の明渡完了時」とされてきました。
そして,2020年4月に施行される改正民法でも「賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき」(第622条の2第1項第1号)と明記されており,借主は,敷金返還請求よりも先に明け渡しをしなければなりません。
そうすると,今回の事案では,BはAにアパートを明け渡さないと,敷金の返還は請求できないことになります。

 

②の敷金の返還額は,改正民法では「受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」(第622条の2第1項柱書)と定めています。
これまで,判例が採ってきたのと同じ内容です。
この借主の債務とは,滞納賃料や,借主が負担すべき修繕費などをいいます。一般的には,この修繕費等には,経年劣化によるもの(例えば,壁紙の日焼け)などは含まれません。

 

今回の事案の場合,AとしてはBからアパートを明け渡された後で室内を確認しないことには,Bが負担すべき修繕費等はわからず,敷金の残金も計算できません。

 

このように考えると,Bの言い分は認められないことになります。よって,Aは,Bに対して,アパートを明け渡すように請求でき,Bが居座り続ける場合は,賃料相当額を敷金から控除できます。Bは,アパートに居座り続けるほど,敷金の返還額は減ることになります。

 

賃貸借契約など不動産のトラブルでお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

賃貸借契約と敷金について(1)

土地や家などを借りる時に,敷金,礼金,保証金などを初期費用として支払うことが多いと思います。これらは,地域によって呼び方が異なるものの,契約終了時に,未払い賃料や修繕費など借主が負担すべき費用に充てるために,事前に貸主に預けておく金銭であることが多いでしょう。

 

さて,次のような場合は,貸主Aはどうしたらいいでしょうか。
(事例)
Aは,Bに,賃料月額10万円で,アパートを貸しました。敷金は20万円で,賃貸借契約時に支払われています。
Bは,半年間は賃料を支払っていましたが,7カ月目の賃料を滞納しました。そのため,AはBに対して賃料を支払うように請求したところ,Bは「支払った敷金を充てておけばいいだろう」といって,支払ってくれません。

 

答えを先にいいますと,このようなBの言い分は認められません。借主から,敷金の分は賃料を支払わない,とは主張できないのです。なぜなら,敷金は,貸主が賃貸借契約終了後に,借主に負担すべき債務があった場合の担保として,貸主が事前に預かっているものであり,借主側が賃料を前払いしたものではないからです。
そのため,AはBに賃料を請求でき,Bが支払わない状態が続けば,Aは,賃貸借契約を解除することができます。

 

これまで,判例はこのような見解を採ってきました。
そして,2020年4月1日に施行される改正民法でも「賃借人は,賃貸人に対し,敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない」(第622条の2第2項)と規定されています。

 

賃貸借契約と敷金については,次回も考えてみたいと思います。

 

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借金の消滅時効について

法律上の時効というと,民法上の権利の時効や,刑法上の刑の時効などがありますが,今回は,民法上の時効,特に借金の消滅時効について,考えてみたいと思います。
時効とは,一定の時の経過によって権利を取得し(取得時効),又は消滅させる(消滅時効)制度のことをいいます。

 

消滅時効とは,例えば,XさんがYさんにお金を貸したのに,Xさんが長年請求しなかったり,Yさんも利息を支払ったりしない場合,返済期日から10年経過したときには,Xさんの貸金債権は時効により消滅します(ただし,今の民法)。

今の民法では,契約から生じる債権の消滅時効について,細かく定めています。例えば,飲み屋のツケは1年,病院での治療代は3年,私人間の消費貸借契約による借金は10年,で消滅するなどです。

 

なお,2020年4月1日から施行される新しい民法では,このような債権ごとに異なる消滅時効はなくなり,債権は,すべて,権利を行使することができることを知った時から5年間,又は権利を行使することができるときから10年間,それぞれ行使しないときに,消滅時効にかかることになります。

 

借金の消滅時効について,少し詳しく見ていきましょう。
借金があっても,今の民法では,借主,貸主が共に何もしない場合は,10年で消滅時効となります。
しかし,消滅時効が完成しても,借主が貸金債権(借金)の消滅という利益を受けるには,「時効の援用」という意思表示が必要です。援用とは,「時効によって消滅した」ことを相手に伝えることです。

 

仮に,借金の返済期日から,10年以上たった後で請求され,借主が時効の援用をせずに,利子を支払ったり,借金があることを認めて支払う約束をしたりすると,借主は,その後は時効の援用をすることができなくなるので,注意が必要です。

 

突然,昔の借金の返済請求をされた,逆に,借金の返済請求をしたい,など,借金についてお悩みの方は,どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。