4月2018

労働者の健康診断と雇用主の義務

雇用主は、労働者に対して健康診断を受診させる法律上の義務があります。

ただ、中小零細企業や事務所では、実際には、このような法的な義務が遵守されていないことが多いのが現実です。

今回は、この問題について考えてみたいと思います。

 

まず、労働安全衛生法 で「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」 と決まっています。

したがって、健康診断の実施は、会社の規模などで決まるものではなく、小さな会社でも人を雇えば、健康診断を受けさせる義務が発生します。

 

では、その内容について、見ていきましょう。

 

1 受診対象者

受診の対象者は、「常時使用する労働者」です。
なお、常時使用する労働者の条件は、期間の定めのない契約により使用される者で、労働時間が通常の労働者の労働時間の4分の3以上である者をいいます。パートタイム労働者やアルバイトでも、このよう条件に該当すれば、健康診断の受診対象者となります。

 

2 受診時期及び回数

・雇い入れ時(雇入時健康診断)
常時使用する労働者(パートも含む)を雇入れる直前又は直後に健康診断を実施します。

・1年以内に一回(定期健康診断)
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施します。

 

3 費用負担

健康診断の費用は事業主が負担する義務があります。

なお、健康診断の時間については、雇用主は、賃金を支払う義務はありませんが、賃金を支払うことが「望ましい」とされています。

 

4 その他

事業者は、健康診断の結果を健康診断個人票を作成して、5年間保管しなければなりません。

また、定期健診は、会社へ法律上の実施義務が課されている一方、従業員にも会社が行う定期健診を受診する法律上の義務が課されています。

受診を拒否しようとする場合は、自分で受診した健康診断の結果を会社に提出しなければなりません。

なお、社員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されます。

 

労働トラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に神戸山手法律事務所まで、ご相談ください。

 

労災保険における傷病の「治癒(症状固定)」について

労災保険は、労働者が業務又は通勤が原因で傷病を被った場合に、その傷病が治るまで必要な療養の給付を行います。

では、労災保険において、傷病が「治ったとき(治癒)」とは、どのような場合をいうのでしょうか。

 

この点、労災保険における傷病が「治ったとき(治癒)」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められている医療を行っても、医療効果、すなわち、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいうとされています。

そして、この状態を労災保険では、「治癒」=「症状固定」といいます。

 

したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるに過ぎない場合」など症状が残存している場合であっても、それ以上の回復・改善が期待できないと判断される場合には、労災保険では、「治癒」として、療養給付は支給されないこととなります。

 

例えば、次のような状態に至ったときは、「治癒」(症状固定)となります。

 

(例1)骨折で骨癒合した場合であって、たとえ疼痛などの症状が残っていても、その症状が安定した状態になり、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

(例2)外傷性頭蓋内出血に対する治療後、片麻痺の状態が残っても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

(例3)腰部捻挫による腰痛症の急性症状は改善したが、疼痛などの慢性症状が持続している場合であっても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

このように、労災保険における「治ったとき(治癒)」は、私たちが一般的に使う状態とは異なっているので、注意が必要となります。

 

なお、労災保険では、「治癒(症状固定)」と判断された場合は、療養給付は受けられなくなります。

そして、障害が残っている場合には、障害給付がその障害の程度に応じて支給されることとなります。

 

労働災害など労働トラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に神戸山手法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

 

 

宝くじの当選金と離婚時の財産分与について

夫婦が離婚した場合には、婚姻期間中に形成した財産については、財産分与の対象となります。

また、通常、その割合は原則として2分の1とされています。

 

例えば、夫婦で貯めた預金は、預金の名義がどちらか一方であっても、離婚時には2分の1ずつとなります。

他方で、婚姻期間前から保有していた預貯金や婚姻期間中に親からの相続で得た財産は、夫婦で形成した財産ではないため、特有財産として財産分与の対象外となります。

 

では、婚姻期間中に、夫が自分の小遣いで購入した宝くじが1億円当たり、その後、離婚時に、そのお金が5000万円残っていた場合に、この500万円は財産分与の対象となるのでしょうか。

また、宝くじの当選金でマンションを購入していた場合に、このマンションは財産分与の対象となるのでしょうか。

 

 

この問題を考える場合には、①宝くじの当選金又はこれを原資とする資産が夫婦共有財産といえるか、②夫婦共有財産といえる場合に財産分与の割合をどうするかが、問題となります。

 

この問題について、最近の裁判例では、①について、全てを夫婦共有財産と認めたうえで、②について、宝くじを購入した夫6:妻4の割合で財産分与を命じる判決がありました。

すなわち、宝くじの当選金又はこれを原資とする資産は全て夫婦共有財産とする一方で、財産分与については、財産形成の寄与度ということで、購入者の夫に6割:妻4割としました。

 

この判決が妥当かといわれると評価が分かれるような気がしますね。

 

離婚やそれに伴う財産分与、慰謝料などでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

社外行事と労災について

労働者が会社主催の宴会や社員旅行に参加して、事故に遭った場合に、労働災害として認められるでしょうか。

今回は、このような問題について考えてみたいと思います。

 

今回の場合、宴会や社員旅行などの事故が「業務上」といえるかが問題となります。

労災は、「業務上」の事由や通勤による働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して必要な給付を行う制度です。

 

そして、「業務上」とは、業務と傷病等との間に一定の因果関係(業務起因性)が存在する場合に認められます。

その場合に、「業務上」の判断は、①「業務」といえるか(業務遂行性)、②業務「上」といえるか(業務起因性)の2点から判断されます。

 

判例では、社外行事中の事故については、「労働者が事業主主催の懇親会等の社外行事に参加することは、通常労働契約の内容となっていないから、社外行事を行うことが業務運営上緊要なものと客観的に認められ、かつ労働者に対しこれへの参加が強制されているときに限り、労働者の社会行事への参加が業務行為になると解するのが相当である。」としています。

これは、会社主催の親睦や慰労などを目的とする社外行事については、原則としては、「業務上」といえないため、㋐社外行事の事業運営上の緊要性と②参加の強制という要件を満たさない限りは、労働災害とは認めないという立場だと思われます。

 

他方で、業務と認められるようなもの、例えば、得意先との接待などについては、労働災害の対象となりうると考えられます。

 

労働災害などでお悩み方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

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