労働と法律

労働者の健康診断と雇用主の義務

雇用主は、労働者に対して健康診断を受診させる法律上の義務があります。

ただ、中小零細企業や事務所では、実際には、このような法的な義務が遵守されていないことが多いのが現実です。

今回は、この問題について考えてみたいと思います。

 

まず、労働安全衛生法 で「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」 と決まっています。

したがって、健康診断の実施は、会社の規模などで決まるものではなく、小さな会社でも人を雇えば、健康診断を受けさせる義務が発生します。

 

では、その内容について、見ていきましょう。

 

1 受診対象者

受診の対象者は、「常時使用する労働者」です。
なお、常時使用する労働者の条件は、期間の定めのない契約により使用される者で、労働時間が通常の労働者の労働時間の4分の3以上である者をいいます。パートタイム労働者やアルバイトでも、このよう条件に該当すれば、健康診断の受診対象者となります。

 

2 受診時期及び回数

・雇い入れ時(雇入時健康診断)
常時使用する労働者(パートも含む)を雇入れる直前又は直後に健康診断を実施します。

・1年以内に一回(定期健康診断)
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施します。

 

3 費用負担

健康診断の費用は事業主が負担する義務があります。

なお、健康診断の時間については、雇用主は、賃金を支払う義務はありませんが、賃金を支払うことが「望ましい」とされています。

 

4 その他

事業者は、健康診断の結果を健康診断個人票を作成して、5年間保管しなければなりません。

また、定期健診は、会社へ法律上の実施義務が課されている一方、従業員にも会社が行う定期健診を受診する法律上の義務が課されています。

受診を拒否しようとする場合は、自分で受診した健康診断の結果を会社に提出しなければなりません。

なお、社員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されます。

 

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労災保険における傷病の「治癒(症状固定)」について

労災保険は、労働者が業務又は通勤が原因で傷病を被った場合に、その傷病が治るまで必要な療養の給付を行います。

では、労災保険において、傷病が「治ったとき(治癒)」とは、どのような場合をいうのでしょうか。

 

この点、労災保険における傷病が「治ったとき(治癒)」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められている医療を行っても、医療効果、すなわち、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいうとされています。

そして、この状態を労災保険では、「治癒」=「症状固定」といいます。

 

したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるに過ぎない場合」など症状が残存している場合であっても、それ以上の回復・改善が期待できないと判断される場合には、労災保険では、「治癒」として、療養給付は支給されないこととなります。

 

例えば、次のような状態に至ったときは、「治癒」(症状固定)となります。

 

(例1)骨折で骨癒合した場合であって、たとえ疼痛などの症状が残っていても、その症状が安定した状態になり、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

(例2)外傷性頭蓋内出血に対する治療後、片麻痺の状態が残っても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

(例3)腰部捻挫による腰痛症の急性症状は改善したが、疼痛などの慢性症状が持続している場合であっても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

このように、労災保険における「治ったとき(治癒)」は、私たちが一般的に使う状態とは異なっているので、注意が必要となります。

 

なお、労災保険では、「治癒(症状固定)」と判断された場合は、療養給付は受けられなくなります。

そして、障害が残っている場合には、障害給付がその障害の程度に応じて支給されることとなります。

 

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社外行事と労災について

労働者が会社主催の宴会や社員旅行に参加して、事故に遭った場合に、労働災害として認められるでしょうか。

今回は、このような問題について考えてみたいと思います。

 

今回の場合、宴会や社員旅行などの事故が「業務上」といえるかが問題となります。

労災は、「業務上」の事由や通勤による働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して必要な給付を行う制度です。

 

そして、「業務上」とは、業務と傷病等との間に一定の因果関係(業務起因性)が存在する場合に認められます。

その場合に、「業務上」の判断は、①「業務」といえるか(業務遂行性)、②業務「上」といえるか(業務起因性)の2点から判断されます。

 

判例では、社外行事中の事故については、「労働者が事業主主催の懇親会等の社外行事に参加することは、通常労働契約の内容となっていないから、社外行事を行うことが業務運営上緊要なものと客観的に認められ、かつ労働者に対しこれへの参加が強制されているときに限り、労働者の社会行事への参加が業務行為になると解するのが相当である。」としています。

これは、会社主催の親睦や慰労などを目的とする社外行事については、原則としては、「業務上」といえないため、㋐社外行事の事業運営上の緊要性と②参加の強制という要件を満たさない限りは、労働災害とは認めないという立場だと思われます。

 

他方で、業務と認められるようなもの、例えば、得意先との接待などについては、労働災害の対象となりうると考えられます。

 

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公務員の飲酒運転による懲戒免職の取消訴訟

先日、私が担当した事件で、地裁で、自治体の職員が飲酒運転に対する懲戒免職処分とそれに伴う退職金不支給処分の取消訴訟の判決がありました。

 

私は、職員の方の代理人をしており、判決では勝訴しました。

 

この職員は、勤務時間終了後に、代行運転を利用するつもりで、同僚と飲酒をした後、運転代行が捕まらなかったことから、思わず、そのまま運転したところ、飲酒検問に引っかかり、酒気帯び運転で検挙されました。

なお、その際、他の交通違反や事故などは一切起こしていません。

 

翌日に、職場の上司に自主的に報告したのですが、懲戒処分の基準では、飲酒運転は原則懲戒免職とされていたため、懲戒免職処分を受けました。
また、併せて退職金も不支給とする処分を受けました。

そのため、職も失い、退職金も支給されないという状態に追い込まれていました。

 

事件の受任後、地方公務員法では、不服申立前置が定められてるため、人事委員会に懲戒処分などの取消しを求めて不服申立てを行いました。

ただ、人事委員会が懲戒免職処分を取り消す可能性は低いとともに、不服申立ての裁決が出るまでには時間がかかるため、不服申立て後、3か月を経過した時点で、行政事件訴訟法の規定に基づき、裁判所に対して懲戒処分と退職金不支給処分の取消訴訟を提起しました。

 

訴訟では、飲酒運転は社会的に非難される非違行為であるにしても、事故など第三者への被害もなく、事故後も自ら申告するなどしていることなど、事実を丁寧に論じて、免職処分は重すぎると主張しました。

 

また、併せて、全国の自治体の処分基準や処分例について47都道府県に情報公開して整理するとともに、最近の裁判例も整理するなどして、これらに照らしても懲戒免職は重すぎると主張しました。

 

その結果、本人尋問も経た後、懲戒免職から約1年で、地裁から懲戒免職と退職金不支給処分を取り消すとの判決がありました。
判決後、自治体側は、控訴を断念し、職場に復帰することとなりました。

 

今回の事件では、酒気帯び運転で検出されたアルコール量もそれほど高くなく、また、他の交通違反も、人身事故など事故も起こしておらず、翌日上司に自主的に報告していることから、他の裁判例や他の自治体の例から見て、懲戒免職は少し重すぎると思われました。

他方で、職場復帰ということを前提とすると、早期に確実に勝訴することが求められていました。

 

そして、このような有利な事実を一つ一つ丁寧に積み重ねて論じていきました。
また、47と都道府県の懲戒処分の処分基準や処分例を全て情報公開請求して整理するとともに、過去の裁判例も整理して、これらに照らしても、今回の処分は重すぎることを論じていきました。
丁寧に論じていったことが、自治体側も控訴を断念し、スピード解決につながったのだと思います。
懲戒免職など労働問題でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

未払残業代の請求について

最近、残業したのに残業代を支払ってもらえないという相談を受けることが多くあります。

日本では、以前より、サービス残業が常態化していましたが、終身雇用制の中では問題にならなかったのが、雇用の流動化とともに顕在化してきたのだと思います。

 

今回は、未払残業代を請求するにあたっての注意するポイントをいくつか挙げて解説したいと思います。

 

まず、最初のポイントは「時効」です。

労働基準法では、給料等の請求の時効期間は、労働基準法で2年と定められています。

 

そのため、未払い残業代の請求をする場合も、実際上支払いを期待できるのは直前の2年分に限られます。

各支払い日から2年間が経過すると時効にかかってしまいますので、特に退職後に請求するという場合は、時間が経過すればするほど請求できる金額は減ってしまいます。

 

したがって、もし退職後に未払い残業代の請求を考えているのであれば、速やかに行動をすることが大切です。

 

次に、労働時間になる範囲についてです。

労働時間は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」かどうかで決まります。

 

例えば、朝礼や掃除のために、始業時間よりも前に来ることが義務付けられているという場合は、これも労働時間になります。

後片付けの時間なども、それが義務的なものなのであれば、労働時間です。

また、電話当番をしている時間や客が来るのを待つ手待時間も、休憩時間とは違って自由に過ごせるわけではないのですから、労働時間になります。

 

3つめのポイントは、これが最も重要で、かつ難しいのですが、「残業時間の証明」です。

残業代がきちんと払われていないことが分かり、会社に未払い分を請求したいという場合に、一番大きな障壁となるのは、残業時間を証明する方法です。

 

裁判で未払い残業代を請求する場合などは、残業時間を1日ごとに正確に証明する必要があります。

残業時間を証明するときに、一番頼りになるのはタイムカードです。

勤務先にタイムカードがあるのであれば、そのコピーを必ず取っておきましょう。

 

もっとも、勤務先によってはタイムカードがない、あるいは、タイムカードはあっても、労働時間が正確に記録されていないという場合もあります。

このような場合は、例えば、労働時間が分かる業務日報、パソコンの記録、自分で作成した出勤・退勤時間の記録メモ等によって立証していくことになります。

ただし、自分で作成した記録等によって立証しようとする場合には、これを裁判所に信用してもらうためのハードルは相当高いことは覚悟しておかなければいけません。

 

未払残業代など労働問題でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

解雇された社員による会社のデータ削除

今日は、勤務不良で社員を解雇したところ、解雇を逆恨みした社員が会社を止める際に、これまでコンピューターに入力した様々なデータを全部消去してしまったという事例について考えてみたいと思います。

 

このような事例の場合に、会社は、この社員を業務妨害で訴えたり、損害賠償を請求することはできないのでしょうか?

 

この事例については、刑事・民事の両面から検討する必要があります。
まず、この社員が故意にコンピューター内のデータを消去した場合、この行為は電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法243条の2)に該当し、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることになります。

 

問題は故意にデータを消去したのか、機械のトラブルや過失によって消えてしまったのか、ということです。

この犯罪は故意犯なので故意に行ったのでなければ犯罪にはなりません。

 

この様な内心の問題は、自白を除いては直接的な証拠はなく、間接的・客観的な事実を積み重ねて立証することになります。証拠として考えられるのは、解雇された際の言動・態度、真実機械のトラブルが発生したか否か、今回のデータ消去が1回の誤作動で発生しうるものか否か、データ消去の時間とアリバイ、更には他の従業員のアリバイ等です。

 

これらを調査をして、その結果これが、故意によるデータ消去でしかもこの社員にしか行えなかったと合理的に推測できるならば、この社員を告訴するべきでしょう。

 

次に、民事上の責任ですが、この社員が故意又は過失によりデータを消去し業務上の損害が発生したのであれば、民法709条に基づき、その損害の賠償を請求することができます。

 

では何が損害といえるのかですが、まずデータを再入力するための人件費等は当然損害といえます。

 

また、それ以外にデータ消去により休業を余儀なくされたのであれば、過去数ケ月分の収入を基に休業期間の得られたであろう利益・収益を損害として請求できるでしょう。

ただ、この損害の立証はなかなか難しい面があるため、概算にならざるを得ない面があると思います。

 

労働関係のトラブルなど法的問題でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

社員への損害賠償と解雇予告手当の相殺について

会社が社員を解雇する場合には、労基法により30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う義務があります。

 

「労働者の責めに帰すべき事由」(例えば、会社のお金の横領など)による解雇として、行政官庁の認定を受ければ、解雇予告手当の支払い義務は免れますが、このような場合を除くと解雇予告手当を支払う必要があります。

 

他方で、社員の不法行為により会社が損害を受けた場合(例えば、社員が会社の備品を壊した場合など)には、当該社員に対して損害賠償請求をすることができます。

 

そして、今回は、社員を解雇するにあたって、解雇予告手当と不法行為の損害賠償とを相殺することができないかという問題について考えてみたいと思います。

 

結論的に言うと、社員に対する損害賠償と解雇予告手当の相殺は、給与の全額払いの原則に反するため、原則としてはできません。

これは、解雇予告手当は次の就職活動に困らないように予告できなかった期間を金銭で補う意味があります。

そのため、解雇予告手当は給与であり、労基法24条の全額払いの原則から他の債権と相殺して支払うことは認められていません。

 

これについて、判例は、「同条項は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することを許さないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはない」と判断しています。

 

ただ、例外として、相殺について社員の同意がある場合には、相殺することは可能です。

下級審の裁判例でも、相殺の同意が社員の完全なる自由意思に基づく場合には、全額払いの原則に反しないとしています。

 

相殺をする場合には、後日の紛争に備えて、社員本人から同意書を取り付けた上で行う必要があると思われます。

また、相殺の範囲は、解雇予告手当の趣旨に照らして、同意があったとしても一部控除に留めることが望ましいでしょう。

 

いずれにしても、解雇予告手当と損害賠償金の相殺は、必ず社員本人の同意を取ってから実施することが重要です。

 

解雇など労働問題のトラブルについては、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

定年後の再雇用の賃下げについて②

先日、東京高裁で、定年退職後に再雇用され、まったく同じ仕事を続けた場合に、定年前の賃金が維持されるべきか、賃下げが許されるかが争われた判決がありました。

 

このブログでも紹介したように、1審は、「特段の事由がない限り同じ仕事なのに賃金格差を設けるのは不合理だ」として、賃下げを違法と判断しました。

 

これに対して、東京高裁は、「賃下げは社会的に容認され合理性がある」との判断を下し、1審判決を取り消しました。

その理由としては、「企業が再雇用で仕事内容を変えず、賃下げするのは公知の事実。企業には定年後の雇用確保措置が義務づけられた。人件費の無制限の増大を避け、若年層を含めた労働者全体の安定雇用を実現する必要がることを考慮すると、減額には一定の合理性がある」と指摘しました。

 

そのうえで、本件では、「年収は定年前の約2割の減額で、同規模企業の引き下げ幅よりもかなり小さい。企業が本業で赤字だと推認できる事情もあり、減額が不合理とはいえない」と判断しました。

 

その結果、有期契約の労働者と正社員との間の不合理な格差を禁じた労働契約法20条に違反しないと結論づけました。

 

この事件は、最高裁に上告されることは確実ですが、皆さんはどのように考えますか?

 

正直、なかなか難しい問題だと思います。

労働契約法の趣旨からすると1審判決が妥当な気がしますが、高齢者の雇用確保の義務づけや若年者の雇用確保など社会的に考えると、高裁判決もやむなしとも思います。

 

いずれにしても、最高裁の判断を待つしかありません。

 

労働トラブルなどでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

 

会社の飲み会後の事故と労災認定

先日、会社の飲み会から仕事に戻る途中の事故で亡くなった社員の妻が起こした裁判で、最高裁判所は「当時の事情を総合すると会社の支配下にあったというべきだ」として労災と認める判決を言い渡しました。

 

これまで飲み会の後の事故は労災と認められないケースがほとんどですが、この判決では個別の事情を考慮して労災を認めています。

 

この事件では、亡くなった男性は上司から会社の歓送迎会に誘われ、忙しいため断りました。

しかし、再び出席を求められたため酒を飲まずに過ごし、同僚を送って仕事に戻る途中で事故に遭いました。

 

労災と認められなかったため妻は国に対して裁判を起こしましたが、1審と2審は「自分の意思で私的な会合に参加したので労災ではない」として退けられ、上告しました。

これに対して、最高裁は、当日の男性の行動は上司の意向を受けたもので、会社からの要請といえると指摘したうえで、歓送迎会は上司が企画した行事だったことや、同僚の送迎は上司が行う予定だったことを挙げ、「当時の事情を総合すると会社の支配下にあったというべきだ」として、1審と2審の判決を取り消し、労災と認めました。

 

これまでの裁判例では、会社の飲み会に参加したあとの事故は、特別な事情がないとして労災と認められないケースがほとんどです。
会社の飲み会に参加した後の事故が労災かどうかは、飲み会の目的や本人の立場、費用の負担が会社か個人か、そして会場が会社の中か外か、といった点から判断されます。
そして、例えば上司に誘われて居酒屋で飲むような場合は、業務との関連性が薄いとして労災と認めない判断が定着しています。

 

こうした中で、今回の最高裁は、「男性は歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その後、残業に戻ることを余儀なくされた」として、事故に遭うまでの一連の行動は、会社の要請によるものだと認めて、労災と認定しています。

 

労働者の置かれた個別の事情を踏まえた適切な判断だと思います。

 

労働災害など労働問題のトラブルでお悩みの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

定年後の再雇用の賃下げについて

先日、仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは

違法だとして、契約社員のトラック運転手が勤務先の運送会社に対し

て正社員と同じ賃金の支払いなどを求めた訴訟の判決がありました。

 

判決で、裁判所は、「正社員と賃金格差を設ける特段の事情は見当た

らず、労働契約法に違反する」と賃下げを違法として定年前と同じ水

準の賃金の支払いを命じました。

 

この点、労働契約法20条は、有期雇用と無期雇用の間で賃金や労働

条件に不合理な格差を設けることを禁じています。

 

この会社のトラック運転手は、60歳の定年を迎え、1年契約の嘱託

職員として再雇用され、仕事は定年前と同じだったが、賃金は約25

%減ったようです。

これに対して、会社側は賃金カットについて、65歳までの雇用延長

を企業に義務付けた高齢者雇用安定法に基づく再雇用で、労働契約法

は適用されないなどと主張したようです。

 

しかし、判決では再雇用後も労働契約法が適用されると認定したうえ

で、「職務が同一であるにもかかわらず、有期、無期雇用の間に賃金

格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理だ」と指摘しました。

 

定年後の再雇用では、賃金が減少のは当たり前という認識が一般にある

と思いますが、それは、労働時間や勤務内容などが変更される場合には

許されますが、定年前と同じ場合には賃下げは許されません。

 

解雇など労働トラブルでお悩みの方は当事務所までお気軽にご相談くだ

さい。

 

 

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