労働と法律

労災保険と障害年金の関係について

労災事故により後遺障害が残った場合に、労災保険から障害年金を受けることができますが、その障害が厚生年金の障害年金の対象となる場合に、労災年金と厚生年金の両方を受け取ることはできるのでしょうか。

 

それについては、 厚生年金は全額受け取れますが、労災年金は調整されるため全額を受け取ることはできません。

 

例えば、障害厚生年金と障害補償年金(労災年金)を受け取る場合、労災年金の額は減額され支給されることになっています。

しかし、障害厚生年金はそのまま全額支給されることになります。

 

ただし、この減額に当たっては、調整された労災年金の額と厚生年金の額の合計が、調整前の労災年金の額より低くならないように考慮されています。

 

この調整は、両制度からの年金が未調整のまま支給されますと、受け取る年金額の合計が、被災前に支給されていた賃金よりも高額になってしまうからです。

また、保険料負担について、厚生年金保険は被保険者と事業主とが折半で、労災保険は事業主が全額負担していることから、事業主の二重負担の問題が生じてしまうためであると説明されています。

 

具体的な調整内容は、障害補償年金(労災年金)を受け取っている人が、障害厚生年金を受け取る場合、障害厚生年金を全額受け取ることができますが、労災年金は0.83の調整率がかけられ全額を受け取ることはできなくなります。

 

しかし、両方の全額を受け取れないだけであり、どちらか一方だけより、支給額は多くなりますから、労災年金と厚生年金の両方を請求する意味は十分にあります。

 

労災事故や労災保険、障害年金などでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

労災の時効について

労災には、給付内容によって、2年と5年の時効があります。

 

労働災害によって疾病や傷害を負った場合に、労働基準監督署に請求を行うことにより、様々な保険給付を受けることができます。
給付の内容は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金及び介護補償給付などがあります。

しかし、これらの請求権には時効があり、一定の期間を過ぎれば請求することができなくなるので注意が必要です。

 

①時効が2年のもの

療養給付、休業補償給付、介護保険給付、葬祭料がこれに該当します。

例えば、療養給付については、医療機関で療養に要する費用(治療費)を支払った日又は費用の支出が具体的に確定した日ごとにその翌日から2年経過すると、時効により請求できなくなります。

 

②時効が5年のもの

障害補償給付、遺族補償給付がこれに該当します。

例えば、障害補償給付については、傷病が治った日、すなわち症状固定の翌日から5年経過すると、時効により請求できなくなります。

また、遺族補償給付については、労働者が死亡した日の翌日から5年経過すると、時効により請求できなくまります。

 

なお、これらの時効は、労災保険についてであり、民法上の損害賠償については請求できる余地があります。

会社側の安全配慮義務違反に基づく債務不履行責任を追及する場合は10年、会社側の故意・過失に基づく不法行為責任を追及する場合は3年、請求ができます。

 

労災事故が発生した場合、会社側は、労災事故として扱うことを避けようとするケースがあります。

いずれにしても、労災事故が発生した場合は、時効によって請求できない事態を避けるために、早めに行動することが必要です。

 

労災事故によりお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

過労事故死について

24歳の男性が,不規則で過重な業務後に,原付バイクを運転して帰宅中,バイクごと電柱に激突するという交通事故によって死亡した事案について,裁判所が「過労事故死」と認定し,企業に安全配慮義務違反による損害賠償責任を認める,画期的な和解勧告が成立しました(横浜地裁川崎支部平成30年2月8日)

 

裁判所は,この和解勧告の中で,過労ないし極度の睡眠不足による交通事故死を含む労災事故死を「過労事故死」ということができる,としました。

 

過労死等防止対策推進法2条では,「過労死等」とは,脳血管疾患や心臓疾患を原因とする死亡若しくは精神障害を原因とする自殺による死亡,又はこれらの疾患としています。
このように,通勤中の交通事故死については,会社に責任を問える労働災害の類型としての「過労死」「過労自殺」ではない,との認識から,これまで,会社の責任を認めた裁判例はほとんどありませんでした。

 

冒頭の和解勧告の事案の概要は,次の通りです。
亡くなった男性は,不規則な仕事で,深夜,早朝も業務に従事していまいました。交通事故発生の前日の拘束時間は計21時間42分間,事故直前の10日間の拘束時間は1日平均14時間弱,最大23時間,残業時間は,事故前1カ月間は91時間49分,事故前6カ月間は63時間20分でした。そして,会社の指示もあり,片道約1時間の距離を,原付バイクで通勤していました。
裁判所は,本件事故の原因として,男性が,疲労が過度に蓄積し,顕著な睡眠不足の状態にあったために注意力が低下し,一刻も早く就眠するために帰宅を急いで原付バイクを運転することとなり,運転中に疲労及び睡眠不足の心身の状態に起因して居眠り状態に陥って運転操作を誤った,と認定しました。

 

そして,労働者が疲労や心理的負荷等が過度に蓄積したり,極度の睡眠不足の状態に陥ると,自動車や原付バイクの正常な運転ができないおそれがあることは,周知のところであり,これと同様に,帰宅の途中など使用者(会社側)の指揮管理する勤務時間及び勤務場所に密接する時間及び場所において,事故が生じる危険性のあることも周知であるといえる,として,会社は労働者に通勤中等の事故が生じないように回避する注意義務を負う,と述べました。

 

そのうえで,本事案については,会社又は上司に対して,業務の負担を軽減させるための措置を講じたり,適切な通勤の方法等を指示するなどして,男性が,疲労が過度に蓄積し,顕著な睡眠不足の状態に陥り,心身の健康を害したり,生命・身体を害する事故が生じることを回避すべき義務を負っていたというべきなのに,これを怠った,と認めました。会社又は上司の義務違反がなければ,事故発生を回避することができたとして,遺族に対して男性の死亡による損害賠償責任を認めたのです。

 

今後は,通勤中の事故について「過労事故死」として認められて,労働者や家族が救済される範囲が広がることが,期待できます。

 

当事務所では,労働問題に関する相談をお受けしています。労働中や通勤中の事故等でお悩みの方は,ぜひ,当事務所にお気軽にご電話ください。

労災で休業中の社会保険について

業務中の災害が原因で仕事を休業した場合,従業員は,労災保険から,治療費などについては療養補償給付,賃金に代わるものとして休業補償給付を受けることができます。

 

では,労災で休業中の間,健康保険や厚生年金などの社会保険はどうなるのでしょうか。

 

従業員は,労災で休業中でも,健康保険の被保険者としての資格は継続しています。会社には,賃金を支払っていない間も,従業員の健康保険料を納付する義務があります。
労災で休業中に労災保険から支払われる療養補償給付は,労災によって負った傷害についてのみに給付されるので,労災とは関係のないケガや病気の治療費等については,健康保険を使うことになります。
そのため,労災で休業中だったとしても,健康保険に加入していないと困るのです。

 

また,健康保険料は,健康保険法で被保険者(従業員)と事業主(会社)が2分の1ずつ負担すると定められています。
会社から賃金が支払われていない場合でも,従業員には保険料の2分の1を支払う義務があるのです。でも,賃金からの天引きはできないので,①毎月,従業員から徴収する,②一旦,会社が立て替えて休業終了後に賃金から差し引く,などの方法をとるしかありません。

 

厚生年金保険についても,同様です。

 

トラブルを避けるために,事前に,会社と従業員との間で,支払方法を話し合っておいた方がよいでしょう。

 

なお,育児休業や介護休業の場合,会社からの賃金がストップしている間は,雇用保険から休業給付金が支払われます。
育児休業中は,会社,従業員共に,健康保険料,厚生年金保険料が免除となります。
しかし,介護休業中は,保険料納付義務があります。労災の休業中と同じです。

 

労災など労働トラブルでお悩みの方は,お気軽に当事務所までご相談ください。

労災と業務上の疾病について

労災は、労働者が業務を原因として被った負傷、疾病または死亡といった労働災害及び通勤災害に対して給付されます。

今回は、労働災害のうち、「業務上の疾病」について説明します。

 

まず、業務との間に相当因果関係が認められる疾病については、労災保険給付の対象となります。

この点、「業務上の疾病」とは、労働者が事業主の支配下にある態において発症した疾病ではなく、事業主の支配下にある状態において有害因子にさらされたことによって発症した疾病をいいます。

 

例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、加重な残業など、その発症原因となった業務上の理由が認められない限り、業務と疾病との間に相当因果関係は認められません。

 

一方、就業時間外における発症であっても、業務による有害因子にさらされたことによって発症したものと認められれば、業務と疾病との間に相当因果関係が成立し、業務上疾病と認められます。

 

そして、一般的に労働者に発症した疾病について、次の3要件が満たされる場合には、原則として「業務上の疾病」と認められます。

①労働の場に有害因子が存在していること

業務に内在する有害な物理的因子(粉じんなど)、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業(加重な残業、精神的な負担なども含まれます)、病原体などの諸因子を指します。

 

②健康被害を起こしうるほどの有害因子にさらされたこと

健康被害は有害因子にさらされたことによって起こりますが、その健康被害を起こすに足りる有害因子の量、期間にさらされたことが認められなければなりません。

 

③発症の経過および病態が医学的にみて妥当であること

業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触することによって起こるものなので、少なくともその有害因子にさらされた後に、発症するものでなければなりません。

しかし、業務上の疾病の中には、有害因子にさらされた後、短期間で発症するものもあれば、相当期間の潜伏期間を経て症するものもあり、発症の時期は、有害因子の性質や接触条件などによって異なることに注意が必要です。

 

なお、③の要件は、脳・心臓疾患やそれに伴う死亡(いわゆる「過労死」)が発生した場合に、これらの原因が医学的に業務による加重な負担によって発症したのかどうかという点で争われます。

業務の加重な負担による脳・心臓疾患や過労死などについては別途説明します。

 

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労働者の健康診断と雇用主の義務

雇用主は、労働者に対して健康診断を受診させる法律上の義務があります。

ただ、中小零細企業や事務所では、実際には、このような法的な義務が遵守されていないことが多いのが現実です。

今回は、この問題について考えてみたいと思います。

 

まず、労働安全衛生法 で「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」 と決まっています。

したがって、健康診断の実施は、会社の規模などで決まるものではなく、小さな会社でも人を雇えば、健康診断を受けさせる義務が発生します。

 

では、その内容について、見ていきましょう。

 

1 受診対象者

受診の対象者は、「常時使用する労働者」です。
なお、常時使用する労働者の条件は、期間の定めのない契約により使用される者で、労働時間が通常の労働者の労働時間の4分の3以上である者をいいます。パートタイム労働者やアルバイトでも、このよう条件に該当すれば、健康診断の受診対象者となります。

 

2 受診時期及び回数

・雇い入れ時(雇入時健康診断)
常時使用する労働者(パートも含む)を雇入れる直前又は直後に健康診断を実施します。

・1年以内に一回(定期健康診断)
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施します。

 

3 費用負担

健康診断の費用は事業主が負担する義務があります。

なお、健康診断の時間については、雇用主は、賃金を支払う義務はありませんが、賃金を支払うことが「望ましい」とされています。

 

4 その他

事業者は、健康診断の結果を健康診断個人票を作成して、5年間保管しなければなりません。

また、定期健診は、会社へ法律上の実施義務が課されている一方、従業員にも会社が行う定期健診を受診する法律上の義務が課されています。

受診を拒否しようとする場合は、自分で受診した健康診断の結果を会社に提出しなければなりません。

なお、社員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されます。

 

労働トラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に神戸山手法律事務所まで、ご相談ください。

 

労災保険における傷病の「治癒(症状固定)」について

労災保険は、労働者が業務又は通勤が原因で傷病を被った場合に、その傷病が治るまで必要な療養の給付を行います。

では、労災保険において、傷病が「治ったとき(治癒)」とは、どのような場合をいうのでしょうか。

 

この点、労災保険における傷病が「治ったとき(治癒)」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められている医療を行っても、医療効果、すなわち、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいうとされています。

そして、この状態を労災保険では、「治癒」=「症状固定」といいます。

 

したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるに過ぎない場合」など症状が残存している場合であっても、それ以上の回復・改善が期待できないと判断される場合には、労災保険では、「治癒」として、療養給付は支給されないこととなります。

 

例えば、次のような状態に至ったときは、「治癒」(症状固定)となります。

 

(例1)骨折で骨癒合した場合であって、たとえ疼痛などの症状が残っていても、その症状が安定した状態になり、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

(例2)外傷性頭蓋内出血に対する治療後、片麻痺の状態が残っても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

(例3)腰部捻挫による腰痛症の急性症状は改善したが、疼痛などの慢性症状が持続している場合であっても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できない場合

 

このように、労災保険における「治ったとき(治癒)」は、私たちが一般的に使う状態とは異なっているので、注意が必要となります。

 

なお、労災保険では、「治癒(症状固定)」と判断された場合は、療養給付は受けられなくなります。

そして、障害が残っている場合には、障害給付がその障害の程度に応じて支給されることとなります。

 

労働災害など労働トラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に神戸山手法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

 

 

社外行事と労災について

労働者が会社主催の宴会や社員旅行に参加して、事故に遭った場合に、労働災害として認められるでしょうか。

今回は、このような問題について考えてみたいと思います。

 

今回の場合、宴会や社員旅行などの事故が「業務上」といえるかが問題となります。

労災は、「業務上」の事由や通勤による働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して必要な給付を行う制度です。

 

そして、「業務上」とは、業務と傷病等との間に一定の因果関係(業務起因性)が存在する場合に認められます。

その場合に、「業務上」の判断は、①「業務」といえるか(業務遂行性)、②業務「上」といえるか(業務起因性)の2点から判断されます。

 

判例では、社外行事中の事故については、「労働者が事業主主催の懇親会等の社外行事に参加することは、通常労働契約の内容となっていないから、社外行事を行うことが業務運営上緊要なものと客観的に認められ、かつ労働者に対しこれへの参加が強制されているときに限り、労働者の社会行事への参加が業務行為になると解するのが相当である。」としています。

これは、会社主催の親睦や慰労などを目的とする社外行事については、原則としては、「業務上」といえないため、㋐社外行事の事業運営上の緊要性と②参加の強制という要件を満たさない限りは、労働災害とは認めないという立場だと思われます。

 

他方で、業務と認められるようなもの、例えば、得意先との接待などについては、労働災害の対象となりうると考えられます。

 

労働災害などでお悩み方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

公務員の飲酒運転による懲戒免職の取消訴訟

先日、私が担当した事件で、地裁で、自治体の職員が飲酒運転に対する懲戒免職処分とそれに伴う退職金不支給処分の取消訴訟の判決がありました。

 

私は、職員の方の代理人をしており、判決では勝訴しました。

 

この職員は、勤務時間終了後に、代行運転を利用するつもりで、同僚と飲酒をした後、運転代行が捕まらなかったことから、思わず、そのまま運転したところ、飲酒検問に引っかかり、酒気帯び運転で検挙されました。

なお、その際、他の交通違反や事故などは一切起こしていません。

 

翌日に、職場の上司に自主的に報告したのですが、懲戒処分の基準では、飲酒運転は原則懲戒免職とされていたため、懲戒免職処分を受けました。
また、併せて退職金も不支給とする処分を受けました。

そのため、職も失い、退職金も支給されないという状態に追い込まれていました。

 

事件の受任後、地方公務員法では、不服申立前置が定められてるため、人事委員会に懲戒処分などの取消しを求めて不服申立てを行いました。

ただ、人事委員会が懲戒免職処分を取り消す可能性は低いとともに、不服申立ての裁決が出るまでには時間がかかるため、不服申立て後、3か月を経過した時点で、行政事件訴訟法の規定に基づき、裁判所に対して懲戒処分と退職金不支給処分の取消訴訟を提起しました。

 

訴訟では、飲酒運転は社会的に非難される非違行為であるにしても、事故など第三者への被害もなく、事故後も自ら申告するなどしていることなど、事実を丁寧に論じて、免職処分は重すぎると主張しました。

 

また、併せて、全国の自治体の処分基準や処分例について47都道府県に情報公開して整理するとともに、最近の裁判例も整理するなどして、これらに照らしても懲戒免職は重すぎると主張しました。

 

その結果、本人尋問も経た後、懲戒免職から約1年で、地裁から懲戒免職と退職金不支給処分を取り消すとの判決がありました。
判決後、自治体側は、控訴を断念し、職場に復帰することとなりました。

 

今回の事件では、酒気帯び運転で検出されたアルコール量もそれほど高くなく、また、他の交通違反も、人身事故など事故も起こしておらず、翌日上司に自主的に報告していることから、他の裁判例や他の自治体の例から見て、懲戒免職は少し重すぎると思われました。

他方で、職場復帰ということを前提とすると、早期に確実に勝訴することが求められていました。

 

そして、このような有利な事実を一つ一つ丁寧に積み重ねて論じていきました。
また、47と都道府県の懲戒処分の処分基準や処分例を全て情報公開請求して整理するとともに、過去の裁判例も整理して、これらに照らしても、今回の処分は重すぎることを論じていきました。
丁寧に論じていったことが、自治体側も控訴を断念し、スピード解決につながったのだと思います。
懲戒免職など労働問題でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

未払残業代の請求について

最近、残業したのに残業代を支払ってもらえないという相談を受けることが多くあります。

日本では、以前より、サービス残業が常態化していましたが、終身雇用制の中では問題にならなかったのが、雇用の流動化とともに顕在化してきたのだと思います。

 

今回は、未払残業代を請求するにあたっての注意するポイントをいくつか挙げて解説したいと思います。

 

まず、最初のポイントは「時効」です。

労働基準法では、給料等の請求の時効期間は、労働基準法で2年と定められています。

 

そのため、未払い残業代の請求をする場合も、実際上支払いを期待できるのは直前の2年分に限られます。

各支払い日から2年間が経過すると時効にかかってしまいますので、特に退職後に請求するという場合は、時間が経過すればするほど請求できる金額は減ってしまいます。

 

したがって、もし退職後に未払い残業代の請求を考えているのであれば、速やかに行動をすることが大切です。

 

次に、労働時間になる範囲についてです。

労働時間は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」かどうかで決まります。

 

例えば、朝礼や掃除のために、始業時間よりも前に来ることが義務付けられているという場合は、これも労働時間になります。

後片付けの時間なども、それが義務的なものなのであれば、労働時間です。

また、電話当番をしている時間や客が来るのを待つ手待時間も、休憩時間とは違って自由に過ごせるわけではないのですから、労働時間になります。

 

3つめのポイントは、これが最も重要で、かつ難しいのですが、「残業時間の証明」です。

残業代がきちんと払われていないことが分かり、会社に未払い分を請求したいという場合に、一番大きな障壁となるのは、残業時間を証明する方法です。

 

裁判で未払い残業代を請求する場合などは、残業時間を1日ごとに正確に証明する必要があります。

残業時間を証明するときに、一番頼りになるのはタイムカードです。

勤務先にタイムカードがあるのであれば、そのコピーを必ず取っておきましょう。

 

もっとも、勤務先によってはタイムカードがない、あるいは、タイムカードはあっても、労働時間が正確に記録されていないという場合もあります。

このような場合は、例えば、労働時間が分かる業務日報、パソコンの記録、自分で作成した出勤・退勤時間の記録メモ等によって立証していくことになります。

ただし、自分で作成した記録等によって立証しようとする場合には、これを裁判所に信用してもらうためのハードルは相当高いことは覚悟しておかなければいけません。

 

未払残業代など労働問題でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

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