賃貸借契約と敷金について(2)

前回に続いて,敷金について,考えます。

次のような事案の場合,Aはどうしたらいいでしょうか。
(事案)
AはBに,アパートを賃料月額10万円で貸しています。契約の時に,AはBから,敷金として20万円を受け取っています。賃貸借契約の期間が満了となり,賃貸借契約が終了しました。そのため,AはBにアパートを明け渡すよう請求しました。Bは,賃貸借契約の終了自体については合意していますが,「Aから敷金を返金してもらうまではアパートから退去しなくていいはずだ」と言って,住み続けています。

さて,Bの言い分には,①敷金の返還を請求できる時期,②敷金の返還額,という2つの問題が含まれています。

①の敷金の返還時期について,判例により「賃貸借終了後の明渡完了時」とされてきました。
そして,2020年4月に施行される改正民法でも「賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき」(第622条の2第1項第1号)と明記されており,借主は,敷金返還請求よりも先に明け渡しをしなければなりません。
そうすると,今回の事案では,BはAにアパートを明け渡さないと,敷金の返還は請求できないことになります。

②の敷金の返還額は,改正民法では「受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」(第622条の2第1項柱書)と定めています。
これまで,判例が採ってきたのと同じ内容です。
この借主の債務とは,滞納賃料や,借主が負担すべき修繕費などをいいます。一般的には,この修繕費等には,経年劣化によるもの(例えば,壁紙の日焼け)などは含まれません。

今回の事案の場合,AとしてはBからアパートを明け渡された後で室内を確認しないことには,Bが負担すべき修繕費等はわからず,敷金の残金も計算できません。

このように考えると,Bの言い分は認められないことになります。よって,Aは,Bに対して,アパートを明け渡すように請求でき,Bが居座り続ける場合は,賃料相当額を敷金から控除できます。Bは,アパートに居座り続けるほど,敷金の返還額は減ることになります。

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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