離婚前の財産の保全について~一方的な財産の処分を阻止するために

円満に暮らしていた夫婦でも,何かのきっかけで,夫婦仲が悪くなり,離婚の危機に直面することがあります。

離婚話が持ち上がって,離婚が成立するまでの間に,配偶者が勝手に自己名義の不動産や,価値のある動産(自動車や貴金属など)などの財産を処分してしまうことがあります。

離婚が成立すれば,婚姻中に夫婦で共に築いた財産は財産分与の対象となるため,その前に自己名義の不動産や価値のある動産などを処分して使ってしまったり,預貯金債権を隠したりしてしまえば,分与されずにすむ,と考えるからでしょう。

不動産などは,他人に売却などされてしまうと,現物を取り戻すことは難しくなります。
そこで,今回は,離婚前に財産分与の対象となる財産を勝手に処分されないようにするための方法について,説明します。

例として,婚姻中に購入した夫名義のマンションについて考えてみましょう。

夫が所有する夫名義のマンションは,当然,夫が自由に売却できます。婚姻中に購入したものであっても,妻が住んでいても,夫が単独で売却可能です。しかし,離婚すれば,婚姻中に築いた財産として財産分与の対象となり,妻に所有権が移転できる可能性があります。

そこで,妻としては,「財産分与請求権」に基づいて,裁判所等に離婚前に財産の処分をさせないことを求めることができます。
方法としては,①民事保全手続,②調停前の仮の処分,③審判前の保全処分があります。

①民事保全手続きは,裁判所に対して,離婚に伴う財産分与請求権を被保全権利として,夫名義の不動産について「処分禁止の仮処分命令」の申立を行うものです。

離婚調停申立前でも手続きを始められることと,強制的な執行力があることが,メリットです。しかし,離婚が前提となるので,離婚事由があること,離婚判決がなされる蓋然性(がいぜんせい)(高い確実性)があること,離婚判決で夫名義のマンションが妻に現物分与される蓋然性が高いこと,保証金,などが要求されます。

②調停前の仮の処分とは,離婚調停申立の後,調停成立前に,不動産の処分を防ぐために行われ,調停委員会が命じる処分です。強制力がないので,調停中に夫がマンションを売却してしまった場合,購入した第三者からマンションを取り戻すことはできません。

③審判前の保全処分は,離婚調停中から,審判が終了するまでの間に行う手続きです。保全処分命令には,強制力がありますが,審判が認められる必然性が高いことや,保全の必要性や緊急性があること,保証金などが要求されます。

このように,離婚前に配偶者が財産を処分することを防ぐには,処分される前に,できるだけ早く,法的な手続きをとる必要があります。