交通事故における家事従事者の損害賠償

交通事故における家事従事者の損害賠償について説明したいと思います。

1 家事従事者
家事従事者とは、男女の別、年齢を問うことなく、現に他人のために家事に従事する者をいいます。したがって、男性であっても構いません。
家事労働については、そもそも金銭的に評価することが可能か、という議論がかつてはありましたが、現在ではこれを否定する立場はみられません。

最高裁の判例も、家事労働を金銭的に評価することを認めています。すなわち、「家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである」としています。

2 家事従事者の基礎収入
ア 原則
家事従事者の休業損害については、これを肯定する考え方が確立されていますが、では、これをいくらと評価すれば良いのか、という問題を生じます。この点について、上記最高裁判例は、女子労働者の平均賃金に相当する財産上の収益をあげるものと判断しており、現在の実務もその考え方に沿って運用されています。

すなわち、女子労働者の平均賃金(産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金または年齢別の平均賃金)を採用することになります。たとえ、その者が大学院卒業者であっても、高校卒業者であっても同じです。

イ 例外
家事従事者のうち、専業主婦については上記の平均賃金を当てはめて休業損害を算定することになります。

問題は兼業主婦の場合です。兼業主婦の場合は、家事労働をこなすほかに、自ら得た所得があります。したがって、自ら得た所得を加算することができるのか、という問題があります。しかし、この点は否定されています。すなわち、賃金センサスの金額と自らの所得を比較して、いずれか多い方の金額を用いるということになります。

したがって、ある兼業主婦が、会社から給与として年間800万円を受け取っている場合は、800万円を基準として休業損害を算定します(上記の女子労働者平均賃金が、800万円を超えることは目下のところあり得ないと考えます。)。
一方、その兼業主婦が、給与として年間100万円しか受けとっていないような場合は、より多額の賃金センサスの金額を用いて休業損害を算定することになります。

ウ 一人暮らしの場合
事故の被害者が一人暮らしの場合(一人暮らしの家事従事者)、実務は休業損害を否定します(東京地判平22・2・9交民43・1・123)。
理由は必ずしも明らかではありませんが、おそらく、家事従事者に休業損害が発生するためには、自分以外の第三者に対し家事労働力を提供していることが必要と考えられているためではないかと思われます。自分自身のために家事労働を行っている場合は収益を生まないので、休業損害を認めなくてもよいということです。

3 休業期間
休業日数(休業期間)については、他の場合と同様の考え方が当てはまります。主婦が、現実に家事労働に従事できなかった期間が、休業期間となります。その場合、受傷内容、受傷部位、治療経過、回復の度合い、被害者の年齢、家族構成などを総合的に考慮して休業割合を決定します。