遺言書の効力

先日、最高裁で、故人が赤いボールペンで全面に斜線を引いた遺言書は有効かが争われた訴訟について判決がありました。
 
結論としては、最高裁は、遺言を有効とした1審及び2審判決を覆して、故人の意思を重く見て遺言を無効とする判決を言い渡しました。
 
事案は、判決によると、広島市で開業医の男性が自筆で署名押印した遺言書を作成して、自宅兼病院の土地建物や預金など、大半の資産を息子に相続させると書き、封書に入れて金庫に保管していました。
 
男性が死亡した後に封書が見つかり、「開封しないで知り合いの弁護士に相談するか家裁に提出して公文書としてもらうこと」と付箋(ふせん)が貼ってあったのですが、封は一度開いた後にのり付けされていたうえ、中に入っていた遺言書には赤いボールペンで文書全体に左上から右下にかけて斜線が引かれていたました。
 
このため、娘が息子を相手取り、遺言書は無効だとする訴訟を起こしたとのことです。
 
民法では、どんな行為が遺言の破棄か、明文規定はない。実務では、(1)焼却(2)切断(3)内容が判別できない程度に上から消した-などの場合は「破棄にあたり無効」としてきたが、内容が判別できる斜線やバツ印などについては見解が分かれています。
 
今回、最高裁は、遺言者の自筆で赤線が引かれていたことから、「すべての効力を失わせる意思がみてとれる。遺言の破棄に該当する」と指摘し、遺言を無効と判断しました。
 
この判断は、遺言執筆時の状況などから、破棄したかどうか本人の意思をくみとることが可能な場合、その意思に沿って判断する姿勢を示したといえるでしょう。今後の実務に影響を与えると思われます。
 
自筆証書遺言の場合は、今回の場合のように、死後にその有効性が争われるケースが多く見られます。
遺言書は、遺産を巡る争いを防ぐために作成するものであると考えると、やはり、遺言書は公正証書で作成する方が確実であると思われます。

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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