厚生年金の未加入と事業主の損害賠償義務

労働者が社会保険の適用事業所で雇用されている場合に、事業主が厚生年金等の加入手続を行わなかったために、厚生年金が受給できない場合に、労働者は受給できなかった厚生年金相当額の損害賠償をすることができるのでしょうか?
 
厚生年金法においては、適用事業所に使用される一定の者は、使用されるに至った日に被保険者資格を取得し、その効力は社会保険庁長官の確認によって生じるとされています。
その確認の前提手続として、事業主は社会保険庁長官に対して被保険者資格の取得を届け出る義務を負っており、その違反には罰則も用意されています。
 
そして、事業主が被保険者資格取得の届出を怠った場合に、後から加入手続をしたとしても、保険料徴収権の2年という時効の壁があり、とりわけ年金に関しては、それ以前の未加入となった期間は将来の老齢年金額に反映されません。
したがって、このような場合に、労働者の負う不利益について事業主に対して損害賠償席球できるかが問題となります。
 
この問題については、下級審の裁判例では、雇用主の届出義務違反を労働契約上の債務不履行とと構成し、労働者の損害賠償請求を認めています。
 
この場合の損害額は、本来受け取ることができた年金額と国民年金の保険料から被用者保険の保険料の本人負担分を控除したものになると思います(過失相殺が行われる場合もあります)。
 
ただ、これまでの裁判例では、被保険者本人が年金支給年齢に達している場合は、ほぼ問題なく損害賠償請求が認められている一方で、年金支給年齢に達しておらず、かつ、資格期間を満たしているかどうか明らかではない事例では、受給可能性ないし受給額が未確定であるとして損害賠償は却けられているようです。